第6回コラム:改善に向けた具体的なアクション【グローバル経営のガバナンス向上に向けて】

海外拠点管理

記事更新日:2023/07/13

第6回コラム:改善に向けた具体的なアクション【グローバル経営のガバナンス向上に向けて】

第5回のコラム『業務・オペレーションの改善 -決算早期化と子会社の詳細情報へのアクセス- (後編)』を読んでみる>>

1. はじめに

前回までのコラムでは、ガバナンス・フレームワークの要素に従い、海外子会社の管理レベル向上に向けた取り組みを紹介してきました。最後の本コラムでは、これらの課題解決に取り組むための具体的なアクションについて説明します。

図表2:ガバナンス・フレームワークと本コラム

第1回グループ経営とガバナンス:海外子会社の実態が見えない、第2回経営戦略とリスク管理:本社と子会社の役割、第3回組織設計:子会社の役員構成と権限移譲の範囲、第4回業務・オペレーション:決算早期化と子会社の詳細情報へのアクセス(前編)、(後編)、第5回業務・オペレーション:決算早期化と子会社の詳細情報へのアクセス(後編)、第6回改善に向けた具体的なアクション

海外子会社の実態が見えない状態は、複数の要素が関連しており、解決に向けた特効薬は存在しません。すなわち、前回までのコラムで紹介をしたように、ガバナンス・フレームワークの要素や各部門・レイヤーごとに適切な仕組みを構築していくことが大切です。
ただし、海外子会社管理で苦心されている企業の多くは、この事実に気づきながらも、目の前の業務量の多さや、部門間での協力関係構築の難しさを背景に、なかなか改善に向けた取り組みを開始できていない状態が多く存在します。
これらを改善するためには、各部署が抱えている問題を整理し課題を設定して、その課題を他部署に展開することで、全社的な活動(プロジェクト)に引き上げていくことが重要です。

2. 経営課題と起案部署、解決に向けたソリューション

第2回及び第4回のコラムで説明をしたように、特に問題となっていることは、海外子会社の業績管理および海外子会社の管理レベルの向上です。これらの問題に対しては、親会社と子会社とで同一のデータを見ていくことが有用であり、業務とシステムとの組み合わせにより、さらにその効果を高めることができます。この考えに基づき、課題やソリューション例等をまとめたものが、図表10となります。

図表10:各種課題とソリューション(例)

①海外子会社の財務情報をタイムリーに入手できない→2層ERPによる連結決算の早期化(コラム第4回)。②海外子会社の業績管理を強化したい→モニタリングすべき事項の明確化、2層ERPによる詳細データの把握(コラム第2回、4回)。③海外子会社から上がってくる情報によく間違いが生じている→2層ERPによる親会社でのチェック(コラム第4回)。④海外子会社の権限の範囲が広すぎる→規定に基づく権限設定(海外子会社の主要役員)、2層ERPでの親会社でのチェック(コラム第3回、4回)。⑤海外子会社にてコンプライアンスが順守できているか検証できていない→経営理念の共有、リスクマネジメント、2層ERPによる親会社でのチェック(コラム第1回、2回、4回)

これら課題の改善に向けた大切なポイントとしては、すべての課題を一度に解決をするのではなく、課題を1つずつ改善することを目標としてプロジェクトを開始するということです。通常、個別の課題の解決に向かって検討を開始すると、その他の部署が関係する課題も識別されます。この積み重ねを行うことで、結果として全社的な活動へ繋がっていくことができます。

3. 外部リソースの活用

これらの改善を開始するにあたって、多くの担当者が、企業内で主要な業務を担当されており、既存の業務に加えて、これらの業務を行う時間を捻出できないことがほとんどです。また、海外子会社の管理は、海外子会社の現地スタッフの知識や能力に依存する部分も多く、また、東南アジアや欧米を中心に人件費が高騰していることからも、必要な人材を集められないケースも多く生じています。そのような場合には、外部のリソースを活用することは有益です。
なぜなら、この外部のリソースといった、第三者が関与する場合は、通常、現状の可視化、課題の特定、ルールの策定、インプリメンテーションというステップを辿ります。さらに、これらのプロジェクトの進捗に応じて、関連部署のみならず、マネジメントへの報告といったプロセスを辿ることができるため、これらの取り組みを全社的な活動に繋げやすくなるというメリットがあります。また、各種の成果物により、社内にナレッジの蓄積ができ、新たな海外子会社への展開時にも活用できるといったメリットも挙げられます。

4. まとめ

市場環境、競争環境の激化により、効果的かつ効率的なグローバル経営が求められる中、多数の企業が海外子会社の管理に苦心をされています。今回、全5回のコラムにて、ガバナンスフレームワークに沿って、管理レベルの向上に向けた各種取り組みを紹介させて頂きました。海外子会社の管理は、子会社化となり、時間が経てば経つほど、親会社からの心理的距離が離れその改善に時間を要します。将来に向けて現時点でできる事から取り組みを開始しようとされている皆様に、本コラムが少しでもお役に立つことができたのであれば幸いです。

<コラム:グローバル経営のガバナンス向上に向けて>
第1回 グループ経営とガバナンス -海外子会社の実態が見えない-
第2回 経営戦略とリスク管理 -本社と子会社の役割-
第3回 組織設計 -子会社の役員構成と権限委譲の範囲-
第4回 業務・オペレーションの改善 -決算早期化と子会社の詳細情報へのアクセス-(前編)-
第5回 業務・オペレーションの改善 -決算早期化と子会社の詳細情報へのアクセス-(後編)-
・第6回 改善に向けた具体的なアクション (本記事)

大沼 善次郎(おおぬま ぜんじろう)

グローウィン・パートナーズ株式会社
S&O事業部マネージャー
公認会計士

有限責任監査法人トーマツで、複数のグローバル企業に対する監査業務に従事すると共に、テクノロジー企業を中心にアドバイザリー業務の現場責任者を歴任。
グローウィン・パートナーズに入社後、IPO支援業務や、経理業務の高度化支援、ERPシステムの導入支援、BPOサービスなど、多くの案件を担当。

※この記事の執筆はグローウィン・パートナーズ株式会社 大沼様、監修は株式会社マルチブックで制作しております。

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