【5分でわかる】成長戦略としてのM&Aとは?

M&A

記事更新日:2020/12/03

【5分でわかる】成長戦略としてのM&Aとは?

こんにちは。マルチブック編集部です。

 今回はM&Aについて説明します。M&Aは昨今何かと紙面を賑わす話題です。有名な例でいうと、社長の言動が注目を集めてきたファッション通販サイト「ZOZOTOWN」の運営元であるZOZOが、2019(令和元)年にヤフーの連結子会社になった事があげられます。買収額が約4000億円にのぼり、創業者で筆頭株主である前沢友作社長が記者会見にあたり涙を流すなど、その金額の大きさや話題性から記憶に残っている人も多いでしょう。しかし、結局M&Aってなんだろう…と思っている方に向けて説明していきたいと思います!

M&Aの定義

M&A(Mergers and Acquisitions)は日本語で「合併と買収」といい、企業またはその事業の全部または一部の移転を伴う取引を指します。

またM&Aには「狭義のM&A」「広義のM&A」があります。以下の図にある通り、狭義的なM&Aとは「会社の経営権の取得」を意味します。つまり買収、合併を指し、おそらく多くの人がイメージしやすいとおもいます。一方広義的な意味では、業務提携、資本提携等をすることによって、シナジー効果(相乗効果)を期待した「経営面での協力関係」を指します。

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(出典:FUNDBOOK

成長戦略としてのM&Aの目的

 企業がM&Aを行う目的は大きく分かれて4つあります。その目的は「事業の類似性」「機能の類似性」という二つの軸に基づき判断されます。

第一の「事業の類似性」は顧客接点に関する経営資源(誰に何を売るか:顧客と製品・サービスに関する経営資源)を対象としています。つまり重点顧客のセグメントと、自社で販売している製品やサービスが類似しているかどうかということです。事業の観点では、対象先の事業と自社企業が類似しているか否かの判断軸となります。

第二の「機能の類似性」とは機能(研究開発、製造、、物流、営業など)を対象にしています。これは研究開発施設や人材、物流拠点や工場・製造ライン、営業拠点・営業チャネルを含みます。それらの要素について、M&Aの相手先の企業と自社との類似性が判断軸となります。

 ここで「事業の類似性」と「機能の類似性」をそれぞれ横軸、縦軸にとり、マトリックス化すると4つの事象に分かれます。次にこれらの事象についてそれぞれ説明しようと思います。

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①類型Ⅰ:ポジションアップ型

事業、機能ともに類似性が高い第一象限はポジションアップ型と位置付けられています。これは同一企業内での水平型統合が代表的です。また最近では海外進出など同事業で地理的拡大を狙ったケースが多く見受けられます。この同一企業同士の統合が行われればシェアが拡大し必然的に業界内での地位が向上します。

②類型Ⅱ:バリューチェーン型

事業の類似性は強いが機能の類似性が弱い第四象限は類似事業において機能面での重複がなく、補完的な関係が強いことからバリューチェーン型と位置付けられています。つまり企業の一体化により機能の連鎖関係が再構築され、結果的にバリューチェーンが強化されることになります。たとえばメーカーが顧客接点を得るために営業網を有する販売会社や販売代理店を買収した結果、クレーム対応力が強化され、顧客の声を製品開発に反映され、製品のプレゼンスが高まったケースがあります。

③類型Ⅲ:ビシネスモデル開拓型

事業の類似性が弱く、機能の類似性が強い第二象限は異業種間の統合が対象であり、ビシネスモデル開拓型と位置付けられます。つまり機能に関する経営資源で一定の類似性や重複が存在する相手先とのM&Aです。それらの一部の類似機能を結節点としながら非類似領域も含めて新しい事業アイデアを構築することができます。ある機能を外部から獲得することで、既存の機能を活用する用途が拡大し新たな収益源を獲得するケースが該当します。

④類型Ⅳ:ポートフォリオ拡大型

事業面も機能面も類似性が弱い第三象限については、グループ全体の事業ポートフォリオの拡大、再編成をするという意味合いでポートフォリオ拡大型と位置付けられます。当事者同士の経営資源は独立色が強く、重複個所はほとんどありません。ここでは基幹事業以外のドメインで将来を支える新たな領域を育てていくという目的があります。たとえば従来経験してこなかったような新規事業を早期に立ち上げていくケースや、あるいはまったくの新規マーケットに参入していくきっかけとして買収を利用して多角化を志向するケースが該当します。

市場規模

日本企業のM&A市場は1985年の統計開始以降、リーマンショックや東日本大震災の影響を除けば一貫して増え続けています!1996年の年間約600件から2019年の年間約4000件と、公表されている件数だけでこの20年間で6倍以上となっています。

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(出典:M&A専門誌「MARR」

 このようなM&A増加の背景には二点の要因があると考えられます。第一に国内市場規模の縮小、第二に後継者不足です。

 第一の国内市場規模の縮小は人口減少デフレの長期化によって説明できます。人口減少を数値的に示す合計合計特殊出生率は1974年以降、低下の一途にあります。また消費者物価指数が下落を続けていることから日本は長期的なデフレ状態にあり、これによって相対的に企業の収益が下がることになります。そのため、多くの企業が日本市場に見切りをつけ、海外展開のためにM&Aを行っています。

 第二の後継者不足に関して、これは主に中小企業に当てはまる問題です。中小企業庁委託「企業経営の継続に関するアンケート調査」(2016年11月、株式会社東京商工リサーチ)によると、中規模法人の後継者の選定状況は、後継者が決まっている(1369名)候補者はいるが、本人の了承を得ていない(950名)後継者候補を探しているが、まだ見つかっていない(453名)後継者を探す時期ではない(401名)後継者候補についてまだ考えたことがない(248名)という結果が出ました。これは高度成長期に起業した経営者が高齢になり、事業を継承しようにもその相手がいないという問題を抱えている企業が多いことを示しています。そのためM&Aによって第三者である会社に事業を引き継ぐことが行われています。

まとめ

いかかでしたでしょうか。この記事では①M&Aの定義②成長戦略としてのM&Aの5類型③市場規模の3点について説明しました。次回はM&Aの中でも昨今話題となっている海外M&Aについて説明していきたいと思います!

次回は海外M&Aを成功に導くための戦略について解説していきたいと思います!

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〈参考文献〉
松江英夫『ポストM&A成功戦略』ダイヤモンド社 2008年 p1~40

この記事を書いた人

マルチブック編集部

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