「うちは中小企業だから、新リース会計基準は関係ない」——そう思っていた担当者が、新基準の適用時期が近づいて初めて”対象だった”と気づく。こうした声は、決して珍しくありません。
2027年4月以降に開始する事業年度から強制適用となる新リース会計基準は、適用対象の判断が複雑です。「中小企業は免除」というのは正確ではなく、一定の条件を満たす企業は規模にかかわらず対応が求められます。
本記事では、「新リース会計基準 中小企業」というテーマに絞り、適用対象の判定フロー・免除条件・見落としがちなケースを詳しく解説します。自社の準備状況を棚卸しするチェックリストとしてもご活用ください。
▶︎新リース会計基準に完全対応!multibookのサービス資料ダウンロードはこちらから>>
目次
「中小企業は免除」は本当か?──誤解が生まれる背景
新リース会計基準における「適用除外」とは、金融商品取引法の適用を受けず、かつ会社法上の会計監査人を設置していない非上場の中小企業(大会社に非該当)について、新基準の強制適用が免除されることを指します。こうした企業は従来どおり、「中小企業の会計に関する指針」または「中小企業の会計に関する基本要領」に基づく会計処理を継続できます。
「中小企業は免除」という言葉が広まった背景には、一定の根拠があります。企業会計基準第34号は「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従った財務諸表を作成する企業」を適用対象としており、会計監査人の設置が法律上義務づけられていない中小企業は、この対象に含まれないと解釈されます。ただし、これはASBJが「中小企業は免除」と明示した規定ではなく、適用範囲の定義から導かれる解釈です。
ASBJは新リース会計基準を「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準」として位置づけており、原則として全企業が対象です。ただし、法定監査の義務がなく、中小企業向け会計基準を適用している企業については、強制適用の対象外とされています。
「うちは非上場の中小企業だから大丈夫」という判断が誤りになりやすいケースは、主に以下の二点です。
- 会計監査人(公認会計士・監査法人)による法定監査を受けている(任意設置の場合も含む)
- 上場企業の連結子会社に該当し、親会社へのレポーティングパッケージで新基準対応が実質的に求められる
「自分たちには関係ない」と判断する前に、まず次のセクションの判定フローで確認することが重要です。適用対象の判断を誤ったまま2027年を迎えると、決算期末に多大な修正対応が発生し、監査対応や対外報告に支障をきたす可能性があります。今の段階で正確に自社の位置づけを把握しておくことが、将来の混乱を防ぐ第一歩です。
新リース会計基準の概要と2027年問題
新リース会計基準(企業会計基準第34号)は、2024年9月に企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した日本の会計基準であり、借手はすべてのリース取引を「使用権資産」と「リース負債」としてバランスシートに計上することを原則とします。
旧基準では「オペレーティング・リース」に分類されたリース取引はオフバランス処理(貸借対照表への非計上)が認められていました。しかし新基準では、原則としてすべてのリースをオンバランス化することが求められます。
旧基準と新基準の主な違い
| 項目 | 旧基準 | 新基準 |
|---|---|---|
| オペレーティング・リースの処理 | オフバランス可 | 原則オンバランス |
| バランスシートへの影響 | 限定的 | 使用権資産・リース負債が増加 |
| 開示要件 | 比較的シンプル | 詳細な注記が必要 |
| 適用開始 | 現行適用中 | 2027年4月開始事業年度より強制適用 |
2027年4月というのは、3月決算企業であれば2027年4月1日に始まる事業年度(2028年3月期)から強制適用となることを意味します。
「まだ1年以上ある」と感じるかもしれませんが、リース契約の棚卸し・システム対応・社内規程の整備には相当の時間がかかります。特に海外拠点を持つ企業では、現地のリース契約情報の収集だけで数ヶ月を要するケースがあります。
適用対象の判定フロー──あなたの会社は対象ですか?
自社が新リース会計基準の適用対象かどうかは、以下のフローで確認できます。
[STEP 1] 会計監査人による法定監査を受けているか?
→ YES ▶ 新リース会計基準の適用対象
→ NO ▶ STEP 2 へ
[STEP 2] 上場企業の連結子会社に該当するか?
→ YES ▶ 連結決算の要件に従い対応が必要(実質的に対象)
→ NO ▶ STEP 3 へ
[結論] STEP 1・STEP 2 がいずれも NO の場合
▶ 新リース会計基準の強制適用対象外
従来どおり「中小企業の会計に関する指針」または「中小企業の会計に関する基本要領」に基づく会計処理を継続できます(任意適用も可)
3-1. 会計監査の有無で判断する
会社法の規定により、資本金5億円以上または負債200億円以上の「大会社」は会計監査人の設置が義務づけられています。これらの企業は法的に新リース会計基準の適用対象です。
大会社に該当しない場合でも、任意で監査法人と監査契約を締結している企業(IPO準備中の会社、銀行融資条件として監査を求められている会社など)は、実務上は新基準に準拠した財務諸表を作成することが求められる場合があります。
3-2. 上場企業の子会社は要注意
非上場の中小企業であっても、上場企業グループの子会社(連結対象)に該当する場合は注意が必要です。親会社が連結決算を行う際、子会社の財務情報を新基準に組み替えて報告する必要が生じるためです。
この場合、子会社側は自社の単体決算として新基準を適用しなくとも、親会社への報告パッケージ(レポーティングパッケージ)は新基準に準拠した数値で提出することが求められます。「単体決算は免除でも、グループ報告は対応必要」という二重構造が生じる点は、多くの担当者が見落とすポイントです。
3-3. 適用対象外となった企業が使える会計基準
会計監査人を設置していない非上場の中小企業(STEP 1・STEP 2 がいずれも NOの場合)は、新リース会計基準の強制適用対象外となります。これが「中小企業は免除」という表現の実態です。
こうした企業は、中小会計指針(「中小企業の会計に関する指針」)または中小会計要領(「中小企業の会計に関する基本要領」)に基づくリース取引の会計処理を従来どおり継続できます。
対象企業が今すぐやるべき4つのアクション
適用対象であることが確認できたら、以下の4つのアクションをただちに開始することが重要です。
アクション①:リース契約の全量把握
まず、自社が締結しているリース契約の全量を把握します。不動産(オフィス・倉庫・店舗)、社用車、OA機器、製造設備など、あらゆる賃貸借契約を棚卸しします。海外子会社がある場合は、現地のリース契約情報も一元的に収集します。
アクション②:影響額のシミュレーション
収集したリース契約情報をもとに、新基準適用後のバランスシートへの影響額(使用権資産・リース負債の増加額)を試算します。この作業は会計士・税理士と連携して行うことが推奨されます。
影響額が大きいほど、財務指標(自己資本比率・有利子負債比率など)への影響も大きくなります。早期に経営層へ報告し、必要に応じて対外説明の準備を行うことが望ましいと言えます。
アクション③:システム・業務フローの整備
新基準では、毎月のリース負債の返済スケジュール管理や使用権資産の償却計算が必要になります。毎月の計算・管理項目が多岐にわたるため、専用システムの導入が実務上の現実的な選択肢となります。
特に月次決算のスケジュールが現状でも逼迫している場合、システム導入による自動化は有効な打ち手となります。専用システムへの移行コストと、手動管理によるリスクを比較検討したうえで、早期に方針を決定することが望ましいと言えます。
アクション④:連結修正仕訳に対応したシステムの選定
上場企業グループの子会社として親会社が新リース会計基準の適用対象となる場合、子会社側は単体決算の処理にとどまらず、親会社の連結決算に組み込むための連結修正仕訳への対応が求められます。この連結修正仕訳は、単体の会計処理とは別に、親会社の連結パッケージに合わせた数値調整が必要となるため、対応できるシステムかどうかを選定時に確認しておくことが重要です。
リース資産管理システムを選定する際は、単体決算への対応だけでなく、連結修正仕訳の自動出力機能を備えているかどうかを要件のひとつに加えることが望ましいと言えます。この機能の有無によって、親会社へのレポーティング業務の工数は大きく変わります。
multibookで実現する「一気通貫」対応──日本の新リース会計基準に完全対応
ここまで解説してきたように、新リース会計基準への対応は「適用対象かどうかの判断」から始まり、リース契約の棚卸し・影響額の試算・システム整備と、複数のステップを経て初めて完了します。
multibookリース資産管理機能は、こうした一連の課題を解決するために、日本の新リース会計基準に完全対応したサービスです。日本拠点のリース資産管理・会計仕訳の作成はもちろん、上述のとおり、日本の大企業の子会社でも利用することが想定されるので、連結修正仕訳までワンストップでサポートします。大規模なシステム投資を行わずに、最短2週間で新基準への対応を実現できます。また、リース資産管理機能のみを単体で導入でき、貴社ご利用中の会計システムへの仕訳連携にも対応しています。
複雑なリース契約に対応
新リース会計基準では、リース料の支払パターンが多様な契約を正確に管理することが求められます。multibookは最大600段階のリース料設定に対応しており、フリーレント・複数月前払・後払・条件変更・満期継続・中途解約など、実務で生じる複雑なリース契約パターンを漏れなく処理できます。
AIリース契約判定、オンバランス自動判定・自動計算、償還票の出力も可能
AIによるリース契約判定、少額・短期・資産計上の判定、割引率(増分借入利子率)の自動設定から、使用権資産の当初計上額・リース負債の当初計上額・毎月の減価償却費・リース負債返済額・支払利息額の算出まで、煩雑な計算を自動で行います。また、リース契約ごとに償還票の出力も可能なため、監査対応や内部管理に必要な資料を迅速に準備できます。
リーズナブルな価格で最短2週間の導入期間
日本の新リース会計基準に準拠した必要な機能を備えつつ、シンプルで使いやすい設計を維持しています。最短2週間での導入が可能であり、充実した導入サポート・稼働後サポートにより、専任の情報システム部門がない中小企業でも安心して運用を開始できます。
連結決算にも対応
新リース会計基準適用対象の大企業の子会社では、親会社向けに、新リース会計基準への連結修正仕訳情報の提出が求められますが、multibookは、この方式にも完全に対応しています。新リース会計基準適用会社、海外子会社、国内子会社全ての要件に対応していることが、multibookの最大の強みです。
「親会社への連結修正仕訳提出を求められている」 「海外子会社の連結修正仕訳が必要」といった課題をお持ちの企業様は、ぜひmultibookへのお問い合わせをご検討ください。
▶︎新リース会計基準に完全対応!multibookのサービス資料ダウンロードはこちらから>>
よくある質問(FAQ)
Q1. 中小企業は新リース会計基準が免除されますか?
会計監査人による法定監査を受けていない非上場の中小企業(資本金5億円未満かつ負債200億円未満)は、新リース会計基準の強制適用対象外となります。こうした企業は従来どおり、「中小企業の会計に関する指針」または「中小企業の会計に関する基本要領」に基づく会計処理を継続することができます。上場企業の子会社に該当する場合や、任意で監査を受けている場合は対応が必要です。「中小企業だから免除」という一律の判断は、実態と異なる可能性があります。
Q2. 非上場の会社でも新リース会計基準の対象になりますか?
非上場であっても、資本金5億円以上または負債200億円以上の「大会社」に該当する場合、会計監査人の設置が義務づけられており、新リース会計基準の適用対象です。また、上場企業グループの子会社として連結対象に含まれる場合も、グループ報告の観点から実質的な対応が求められます。
Q3. 新リース会計基準の適用開始はいつからですか?
2027年4月1日以降に開始する事業年度から強制適用となります。3月決算企業では2028年3月期(2027年4月〜2028年3月)が初年度です。決算月によって適用開始時期が異なるため、自社の事業年度の開始月を基準に確認することが重要です。早期適用(任意適用)は2025年4月1日以降に開始する事業年度から認められています。
Q4. 「中小企業の会計に関する指針」または「中小企業の会計に関する基本要領」を採用している企業は新リース会計基準の対象外になりますか?
「中小企業の会計に関する指針」または「中小企業の会計に関する基本要領」を採用している企業は、新リース会計基準(2027年度強制適用)の直接的な適用対象外となります。ただし、以下のケースでは対応が必要になる場合があります。
- 上場企業の連結グループに属しており、新リース会計基準に関する連結修正仕訳の提出を求められている
- 近い将来、IPOを検討している
「現時点では対象外」であっても、自社の状況や将来の資本政策を踏まえ、早めに要否を確認しておくことが重要です。
まとめ
- 「中小企業は免除」は正確ではなく、会計監査の有無・中小会計基準の採用有無・グループ会社の関係性を総合的に判断する必要があります。
- 上場企業の子会社に該当する中小企業は、単体決算が免除であっても親会社への報告パッケージへの対応が実質的に求められます。
- 対象企業はリース契約の棚卸し・影響額シミュレーション・システム整備の3ステップを今すぐ開始することが成功の鍵となります。
▶︎新リース会計基準に完全対応!multibookのサービス資料ダウンロードはこちらから>>
▶︎multibookに関するお問合せやお見積り依頼はこちらから>>
※ 本記事は2026年4月時点の情報を基に作成しています。会計基準・法令は今後変更される可能性があるため、最新情報を確認し、必要に応じて公認会計士・税理士等の専門家に相談することが重要です。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、個別の会計処理・税務処理についての助言を行うものではありません。
<関連記事>
・新リース会計基準、何から手をつけるべき?「大丈夫」と思っている企業が見落としがちなポイント 〜タイプ別に整理してみた〜
・あと約1年半で本格適用!今からでも間に合う新リース会計基準の適用スケジュールと移行ロードマップ
・徹底解説!今から備える「新リース会計基準」導入の目的と実務対応のポイント
・新リース会計基準の要!割引率が財務諸表に与える影響と適切な決定方法
・新リース会計基準の早期適用: メリットと準備のポイントを徹底解説
・新リース会計基準 リース契約の落とし穴:リース期間の設定ミスで起こる財務リスクと対策
・経理担当者必見:「隠れリース」を識別し、新リース会計基準に備える
・リース資産管理システム(IFRS16号対応)で企業の財務管理を革新する



