経理担当者必見:「隠れリース」を識別し、新リース会計基準に備える
新リース会計基準
記事更新日:2025/01/21

「隠れリース」とは何か?
「隠れリース」という言葉を耳にしたことはありますか?2024年9月13日に企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した新リース会計基準により、この「隠れリース」が大きな注目を集めています。
「隠れリース」とは、形式上はリース契約ではないものの、実質的にリースと同様の経済的効果を持つ取引のことを指します。従来のリース会計基準では見過ごされてきたこれらの取引が、新基準の適用により会計処理の対象となる可能性が高まっています。一般的なリース取引との最大の違いは、契約書上で「リース」という言葉が使用されていない点です。しかし、新基準では契約の形式ではなく、その経済的実質に基づいてリースかどうかを判断することになります。
目次
新リース会計基準における「隠れリース」の位置づけ
2027年4月1日以降に開始する事業年度から、新リース会計基準の適用が義務付けられます(※1)。この新基準では、リースの定義が大きく変更されました。
新基準におけるリースの定義は、「原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約または契約の一部分」となっています。さらに、「契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、当該契約はリースを含む」という条件が加わりました。
この定義の変更により、従来はリースとして認識されていなかった多くの契約が、新基準ではリースとして扱われる可能性があります。つまり、「隠れリース」が表面化し、会計処理の対象となるのです。
新リース会計基準に完全対応!multibookリース資産管理機能のサービス資料をメールで受け取る>>
「隠れリース」の具体例
「隠れリース」は、様々な形で存在します。以下に代表的な例を挙げてみましょう。
- 不動産賃貸契約:
オフィスや店舗の賃貸契約は、従来はオペレーティングリースとして扱われ、オフバランス処理されることが多かったですが、新基準ではリースとして認識される可能性が高くなります。 - レンタル契約:
複合機や社用車のレンタル契約も、使用期間や条件によっては「隠れリース」として扱われる可能性があります。 - アウトソーシング契約:
ITインフラのアウトソーシングなど、特定の資産の使用権が含まれる契約も、「隠れリース」に該当する可能性があります。 - サービス契約:
クラウドサービスの利用契約など、サーバーやストレージの使用権が含まれる契約も、新基準ではリースとして認識される可能性があります。
「隠れリース」の識別方法
新リース会計基準では、契約がリースを含むかどうかを判断するための3つの基準が設けられています。
- 資産が特定されているか
- 特定の資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有しているか
- 資産の使用を指図する権利を有しているか
これらの基準に基づいて、各契約を精査する必要があります。契約書に「リース」という言葉が使われていなくても、上記の条件を満たす場合は「隠れリース」として認識されることになります。
隠れリースが懸念される理由
- 契約の洗い出しの負担:
- 隠れリースを特定するためには、すべての契約書を精査し、リースに該当するかどうかを判断する必要があります。特に、契約書が膨大な数にのぼる企業では、これが大きな負担となります。
- 隠れリースを特定するためには、すべての契約書を精査し、リースに該当するかどうかを判断する必要があります。特に、契約書が膨大な数にのぼる企業では、これが大きな負担となります。
- 解釈の難しさ:
- リース期間やオプション条項(延長オプションや解約オプション)の合理的な判断が求められ、解釈の違いによる混乱が生じる可能性があります。
- リース期間やオプション条項(延長オプションや解約オプション)の合理的な判断が求められ、解釈の違いによる混乱が生じる可能性があります。
- システム対応の必要性:
- 隠れリースを含むリース契約を管理するためには、専用の資産管理システムや会計ソフトの導入が必要となる場合があります。これにはコストや時間がかかるため、企業にとって大きな課題です。
「隠れリース」がもたらす財務への影響
「隠れリース」が表面化することで、企業の財務諸表に大きな影響が及ぶ可能性があります。
- バランスシートへの影響:
これまでオフバランスだった「隠れリース」がオンバランス化されることで、資産と負債が同時に増加します。例えば、長期の不動産賃貸契約がリースとして認識されると、使用権資産とリース負債が計上されることになります。 - 財務指標への影響:
資産と負債の増加により、ROA(総資産利益率)や自己資本比率などの財務指標に影響が出る可能性があります。特に、多くの不動産賃貸契約を抱える小売業やサービス業では、影響が大きくなると予想されます。 - 損益計算書への影響:
リース資産の減価償却費とリース負債に対する利息費用が計上されることになり、費用の性質や計上のタイミングが変わる可能性があります。
新リース会計基準の対応はクラウドERP multibookで!サービス資料を見てみる>>
企業が取るべき対応策
新リース会計基準への対応は、早めの準備が重要です。以下に、企業が取るべき対応策をまとめます。
- 現状の契約の洗い出し:
まずは自社が保有するすべての契約を洗い出し、新基準の下でリースに該当する可能性のある契約を特定します。特に、これまでリースとして認識していなかった契約に注意が必要です(※1)。またその際、会計基準の専門家やコンサルタントを活用し、基準の適用に関する判断をサポートしてもらうことが推奨されます。 - システム対応:
新基準に対応した会計システムの導入や既存システムの改修を検討します。リース資産の管理や複雑な計算を効率的に行うためには、適切なシステムサポートが不可欠です。 - 社内体制の整備:
経理部門だけでなく、調達部門や各事業部門を含めた横断的なプロジェクトチームを立ち上げ、新基準への対応を進めます。また、社内規程の見直しや従業員への教育も重要です。 - 影響度分析:
新基準適用による財務諸表への影響を試算し、必要に応じて契約内容の見直しや事業戦略の再検討を行います。 - 開示情報の準備:
新基準では、リースに関する詳細な開示が求められます。必要な情報を収集し、開示資料の作成準備を進めます。
まとめ:新リース会計基準への準備
2027年4月の新リース会計基準適用まで、残された時間は決して長くありません。「隠れリース」の存在を認識し、適切に対応することは、企業の財務報告の透明性と比較可能性を高めるだけでなく、投資家や利害関係者との良好な関係構築にもつながります。
新基準への対応は、単なる会計処理の変更にとどまらず、企業の経営戦略にも影響を与える可能性があります。経営者は「隠れリース」の影響を十分に理解し、早期に対応策を講じることが求められます。
会計システムの導入や改修、社内体制の整備など、準備には時間がかかります。2027年の適用開始に向けて、今すぐにアクションを起こすことをお勧めします。新リース会計基準への対応を通じて、より強固な財務基盤と透明性の高い経営を実現しましょう。
最後に、弊社株式会社マルチブックが提供する新リース会計基準に完全対応した「multibookリース資産管理システム」をご紹介させてください。
グローバルクラウドERP multibookは2020年にIFRS16号リース資産管理に対応した機能をリリース済みですので、これからやってくる新リース会計基準の要件も概ね既に実装済みです。IFRS16号対応においては主に連結財務諸表をターゲットとしていましたので、今後新リース会計基準の適用開始に向けて個別財務諸表をターゲットにした各種機能増強を実施する予定です。
新リース会計基準適用後に必要な複雑なリース契約への対応や資産計上の自動判定、自動計算が可能で、リーズナブルな価格で最短2週間での導入が可能です。新リース会計基準適用に向けて対応方法を検討中の方は是非一度、multibookのリース資産管理システムをご覧ください。
新リース会計基準対応のリース資産管理システム導入に関する相談や見積依頼はこちらから!>>
<参考>
(※1)2027年度 新リース会計基準適用に向け、早めの準備を! (株式会社ビジネス・アソシエイツ)
<関連記事>
・新リース会計基準の早期適用: メリットと準備のポイントを徹底解説
・新リース会計基準 リース契約の落とし穴:リース期間の設定ミスで起こる財務リスクと対策
・リース資産管理システム(IFRS16号対応)で企業の財務管理を革新する
・リース資産管理ソフトウェアのトップ3:マルチブック、プロシップ、ワークスの比較