経理領域で急速に進むAI活用
経理領域でAI活用が急速に進んでいる背景には、主に次のような事情があります。
- 人手不足・採用難:経理人材の確保が難しくなる中、限られた人員で業務を回す必要がある
- 生成AIの普及:専門的なITスキルがなくても、対話形式でAIを使いこなせる環境が整ってきた
- グローバル化に伴う業務の複雑化:多言語・多通貨・各国の会計基準対応など、経理担当者が扱う情報量が増え続けている
これらを背景に、請求書処理や仕訳入力といった定型業務だけでなく、経営データの確認・分析といった業務でもAI活用を検討する企業が増えています。特に海外拠点を持つ企業では、拠点数が増えるほど業務負荷が積み上がりやすく、この傾向が顕著です。
海外子会社・海外拠点が抱えやすい経理の課題
海外拠点を持つ企業の経理部門には、国内だけの事業では生じにくい特有の課題があります。
課題1:拠点からの報告が遅く、経営状況の把握に時間がかかる
海外拠点からの報告が遅れると、連結決算や経営状況の把握に時間がかかります。拠点側にも「なるべく低コストで」「本業がある中で本社業務は後回し」といった事情があり、本社側の要望だけで報告フローを整えるのは容易ではありません。
課題2:拠点ごとにシステムが分断され、情報を集めるのに手間がかかる
拠点ごとに現地システムやExcelが乱立し、情報が分断されているケースも多く見られます。本社の経理・財務担当者が状況を把握しようとしても、複数の画面や資料を行き来して情報を集める必要があり、手間がかかります。
課題3:経営者への報告のたびに、経理担当者が都度対応に追われる
ERPやシステムを導入していても、経営者自身がそれを使って経営状況を確認しようとすると、画面の操作方法を覚える必要があります。操作に不慣れな場合は経理担当者へ都度確認を依頼することになり、経理担当者は本来注力すべき分析業務よりも、都度対応に時間を取られやすくなります。
これらの課題に対して、システムの一元化をERPで進めながら、その上で入力やデータ活用をAIによって効率化するという考え方が重要になります。
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経理AI DXで変わる2つの業務
経理分野におけるAI活用は、大きく2つの方向に分けられます。
① 入力業務を自動化するAI
請求書の読み取りから仕訳計上までを自動化するAIや、リース取引の識別・オンバランス判定を支援するAIなどが該当します。拠点側の入力負荷を減らしながら、本社側もより早いタイミングで正確なデータを確認できるようになります。
② 経営データの確認・分析を支援するAI
対話形式で質問することで、必要な経営データを簡単に確認・分析できるAIです。経営者自身がその場で状況を確認できるため、経理担当者への都度の問い合わせを減らすことができます。
経理AI DXでは、これら2つのAI活用を実際の業務にどう組み込むかが重要です。
こうしたAI活用を日々の会計業務に組み込むうえで、重要な基盤となるのがERPです。
海外拠点ERPの選び方:なぜ今「AI機能」が重要な軸になっているのか
海外拠点向けのERPを比較検討する際、これまでは主に「グローバル統一のしやすさ」「現地業務への適合」「導入期間」「コスト」といった軸で評価されてきました。これらに加えて近年重視され始めているのが、AI機能の有無や、実際の業務でどこまで活用できるかです。
ERPの選び方としては、前述の『入力業務の自動化』と『経営データの確認・分析支援』という2つの観点から、それぞれの業務をAIでどこまで支援できるかを確認することが、今後ますます重要になっていくでしょう。
海外拠点管理のERPを比較するときのポイント
では、こうしたAI DXを実現する基盤としてERPを見る場合、どのような点を比較すべきでしょうか。
AI機能を軸に加えると、ERPの比較検討は次のように整理できます。
| 比較項目 | 大型グローバルERP | 海外ローカルソフト | グローバルAI ERP multibook |
|---|---|---|---|
| グローバル統一 | 高機能で大企業の全社統一に向く | 拠点ごとに異なる運用になりやすい | 海外拠点を横断して一元管理が可能 |
| AIによる入力業務の自動化 | 製品によって差があり、追加ライセンスが必要な場合がある | AI機能を搭載していない、または限定的な製品が比較的多い | AI-OCR・AI自動仕訳・AIリース判定を提供 |
| AIによる経営データの確認・分析支援 | 専用の分析機能を持つ製品もあるが、操作に一定の習熟が必要な場合がある | レポート機能が限定的な製品が多い | マネジメントコックピット(経営ダッシュボード)に加え、AIとの対話による確認機能を提供予定 |
| 現地運用 | 設計・導入負荷が大きくなる場合がある | 現地業務に適合しやすい | 拠点ごとに利用範囲を選択可能 |
| 導入期間 | 大規模導入では長期化しやすい | 比較的短期間 | 最短2週間 |
| コスト | 初期投資・運用コストともに大規模になりやすい | 買い切り型が多く初期費用を抑えやすい | 企業規模や利用範囲に応じたリーズナブルな料金設定 |
※各製品カテゴリの傾向は一般的な特徴を整理したものであり、すべての製品に当てはまるものではありません。
拠点の規模や運用形態に加え、AI機能によって、実際の業務負荷をどこまで削減できるかも、今後のERP選定で重視したい比較軸です。
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AI機能に力を入れているERPの一例
ここまで、海外拠点ERPを選ぶ際にAI機能をどう評価すべきかを、①入力業務の自動化と②経営データの確認・分析支援という2つの観点から整理してきました。では実際に、これら2つの観点でAI機能の拡充に力を入れているERPにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは一例として、私たちmultibookが提供している機能を、①②それぞれの観点からご紹介します。
マルチブックが進める「AI活用機能拡充」の取り組み
マルチブックは、AIを活用したグローバルERPの実現を開発方針の一つに据え、①入力業務の自動化と②経営データの確認・分析支援の両方でAI機能の拡充を継続的に進めています。
①入力業務を自動化する機能
請求書を読み取り仕訳情報を自動作成する「AI自動仕訳機能」、契約書を読み取り資産情報を自動設定する「AI-OCRによる自動読取機能」、リースの識別・オンバランスの一次判定を自動化する「AIリース判定機能」等をリリース済みです。
②経営データの確認・分析を支援する機能
経営データの確認・分析を支援する機能として、2026年10月に『AIチャット機能』のリリースを予定しています。
AIチャット機能とは
経営者を主な利用者として想定した機能です。従来、経営者がmultibook上の経営データを確認するには、画面の操作方法を覚えるか、経理担当者へ都度確認を依頼する必要がありました。AIチャット機能は、画面右下のアイコンからどの画面でも呼び出せ、『今月のPLを分析して』といった質問に対し、multibook上の実データをもとに、必要な情報を集計・表示します。やりとりは「スキル」として保存でき、繰り返し行う確認作業を効率化できます。
multibook上の実データを直接参照して回答するため、経営データを外部の汎用AIサービスへアップロードする必要がありません。機密性の高い財務データを扱ううえでも安心です。日本語・英語の2言語に対応し、設定なしで切り替え可能です。
よくある質問
Q:経理のAI DXとは、具体的にどのようなことを指しますか。
A:請求書処理などの入力業務の自動化に加え、経営データの確認・分析をAIが支援するなど、経理業務全般にAIを組み込み、業務プロセスを効率化する取り組みを指します。
Q:海外拠点ERPの選び方として、AI機能はどう評価すればよいですか。
A:コストや導入期間といった従来の軸に加え、入力業務の自動化や経営データの確認支援など、AIによってどこまで業務負荷を減らせるかを確認することが重要です。
Q:AIチャット機能とはどのような機能ですか。
A:経営者や本社の経理・財務担当者が、multibook上の会計情報・経営状況を会話形式で確認できる機能です。2026年10月にリリースが予定されています(内容・仕様は今後変更となる場合があります)。
Q:AIチャット機能で確認したデータは、外部に送信されますか。
A:いいえ。multibook上の実データを直接参照して回答するため、経営データを外部の汎用AIサービスへアップロードする必要はありません。
Q:導入にはどのくらいの期間がかかりますか。
A:最短2週間での稼働が可能です。すべてリモートで進めることができます。
まとめ:経理AI DXは、ERPの選び方の新常識になりつつある
海外拠点を持つ企業にとって、報告の遅れやシステムの分断、経営状況確認のたびに発生する経理担当者の負担は、拠点数が増えるほど大きくなりやすい課題です。こうした課題に対して、経理業務にAIを組み込む「経理AI DX」の考え方が広がりつつあり、海外拠点ERPの選び方においても、AI機能の有無や活用度が新たな比較軸として重視され始めています。
海外拠点向けのERPを検討する際は、従来の比較軸に加えて、AI機能がどこまで自社の経理課題を解決できるかという視点もあわせて確認してみてください。
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