IFRS16号リース資産管理における4つの重要ポイントを徹底解説

会計

記事更新日:2022/07/28

IFRS16号リース資産管理における4つの重要ポイントを徹底解説

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2019年1月からIFRS16号(リース)が適用開始されています。
最近お客様からの質問が増えてきたことから、IFRS16号リース資産管理の簡単な解説と資産管理の重要なポイントについて述べたいと思います。

なお現在、日本基準において新しいリース会計基準を開発中ですが、昨今の他の新しい会計基準はIFRSとほぼ同内容となっている傾向があることから、日本の新しいリース会計基準(改正リース会計基準)もIFRSと同程度の内容の基準となることが想定されます。

①基本的な会計処理

まず、基本的な会計処理(本稿では、大きく変更のある借手の処理にフォーカス)について説明します。IFRS16号では、ファイナンスリースとして処理していたケースに加え、従来オペレーティングリースとして費用処理していたケースについても、原則としてリース開始時に使用権資産の計上とリース負債を計上する処理(いわゆるオンバランス処理)が要求されます。加えて、今まで賃借料等の科目で費用処理していたオフィスや社宅等の不動産賃借契約も、IFRSではリースの対象に含まれるとしてオンバランス処理が求められます。他にもリース期間については、契約上の期間ではなく、実際に利用が見込まれる期間とする必要があります。

次に、計上された使用権資産については、通常の固定資産と同様に、その耐用年数に応じて減価償却を行います。月次等のタイミングでリース料を支払った場合には、その支払額を金利とリース負債の元本の返済に区分計上します。更に、最低限毎四半期決算等のタイミングで使用権資産について減損判定を行う必要があります。契約の途中であっても、リース期間変更等の条件変更が有った場合には、リース負債や使用権資産の計上金額の見直しを行う必要があります。

実務上の負担を考慮して、例外的に重要性の低い①1年以内の短期リースと、②リース資産が5,000USドル未満(中古であっても新品時の値段で判断)の少額リースは費用処理が認められています。この点、現在の日本基準では、短期リースの条件は1年と同じですが、少額リースの要件は300万円以下であることから、理屈の上では、オンバランス処理すべきリース取引は増加することが想定されます。したがって、オペレーティングリースや家賃等の件数が多い企業については、大幅にリース関連の業務が増加する可能性があります。

こうしてリースの件数が多くなる場合に、これらのリースのデータをExcelにて管理することは困難であることから、IFRS16号に準拠したシステムの導入が望ましいです。システムを導入する際に必要な機能や仕様について以下にコメントします。

②2つの台帳の保持と入力の効率化

日本の開示制度上、IFRSは連結財務諸表にのみ適用し、実務上個社の数値に反映させるのではなく、連結決算時における基準調整項目となります。言い換えると、1つのリース案件に対し、連結財務諸表作成用のためのIFRS基準調整用の数値の台帳と、親会社単体又は子会社単体の数値の台帳(子会社が採用する日本基準又はIFRS又はローカル基準の数値)と会社毎に2つの台帳を保持すべきと考えます。

この点、効率化の観点からは、1回の入力で、この単体用の台帳と連結用の台帳が生成される機能が望ましいです。また、処理の均一性の観点からは、単体と連結のそれぞれで、少額資産、短期リースに該当する場合には、費用処理と自動判定される機能、オンバランス処理に該当する場合には、月次のリース料と支払回数、リース期間、リース物件の取得原価等を元に金利と原本返済の金額が自動計算される機能があると、会計に詳しくない担当者にとっても、一定レベルの処理が可能となります。
加えて、開示の観点からは、使用権資産の減価償却費やリースに係るキャッシュアウトフローの合計額等、注記情報の収集が出来る機能が必要と考えます。

③仕訳の自動出力

単体のリース基準とIFRSのリース基準の内容が異なる場合、上記2つの台帳から、連結調整として基準差異を調整する必要があることから、効率化の観点で、単体の会計仕訳と連結上の修正仕訳が自動で出力される機能が望ましいです。特に、連結調整時の税効果仕訳や期首の開始仕訳等の自動化は、ルールを決めてしまうことにより、大幅に省力化できます。

④現地通貨ベースでの台帳の入力・管理

日本基準では、原則として全ての子会社を連結の範囲に含める必要がありますが、例外的に重要性の乏しい子会社は連結の範囲に含めないことができる容認規程が有ります。他方、IFRSでは理論上、全ての子会社を連結の対象に含める必要があり、今まで連結対象としなかった会社が連結の範囲に含まれることがあります。具体的には、グローバルに展開している日本の製造業や小売業の企業は、東南アジアの子会社に生産委託したり、現地に販売拠点をおいたりするケースがあり、IFRSの場合、小規模であったとしてもこの在外子会社が、連結の範囲に含まれてしまうことが想定されます。

その場合、親会社の連結担当が、在外子会社のリース案件の入力から管理まで行うのは現実的でなく、ある程度の教育を実施した上で、在外子会社自身にリース契約時の入力から管理まで実施させることが、連結決算早期化と親会社の連結担当の負荷分散を図るための鍵と考えます。したがって、グローバル化の度合いに応じて、在外子会社各国で利用されている現地通貨によって現地の台帳を入力出来る仕様であることが望ましいと考えます。

この記事を書いた人

井上 泰介(いのうえ たいすけ)

(株)ビジネスブレイン太田昭和
アカウンティング・コンサル本部 CPA室 マネージャー
公認会計士

大学卒業後、通信機器メーカーで営業に従事。その後、大手監査法人にて製造業、小売業、食品メーカー、IT企業など、さまざまな業種の監査業務に携わる。監査法人退職後、製造業での経理を経て現職。当社入社後、IFRS導入、IPO準備企業に対するIT全般統制導入、新収益認識会計基準導入、電子帳簿保存法対応などのプロジェクトに従事。

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この記事を書いた人

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