中小企業の海外進出の増加背景と注目進出先、成功の鍵を解説

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記事更新日:2021/08/26

中小企業の海外進出の増加背景と注目進出先、成功の鍵を解説

こんにちは。マルチブック編集部です。

日本では人口が減少し、国内需要が縮小していく中、新市場を開拓するべく海外進出に乗り出す日本企業が多く存在します。特に最近では、大企業だけでなく中小企業も積極的に海外展開を目指すようになってきています。

そこで、今回は、海外進出を成功させたいと考えている中小企業様向けに、中小企業の海外進出の現状や海外進出時の成功の鍵ついて、様々な企業の海外進出を支援するマルチブックが考察していきます。

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中小企業の海外進出が進む理由

昨今、中小企業が海外進出を積極的に進めている理由として、主に以下の点が挙げられます。

国内需要の減少

先述の通り、日本国内では人口が減少し、国内需要は縮小していくばかりです。そのため、中小企業がいち早く成長を遂げていくためには、新たな市場に乗り出し、利益を拡大していく必要があります。


出典:総務省統計局「人口推計-令和3年7月報」

働き手の減少

国内人口が減少する中、日本では働き手も減少していく懸念があります。そのような状況下では、大企業ほどリソースが豊富でない中小企業にとって、国外の安価な労働力を求めて海外進出を進める重要性が高まっているのです。

海外諸国での税制優遇による節税効果

新興国を中心として、外資に対する税制優遇措置をとる国も多く、それらの国では節税効果が見込めます。比較的、税率が低い国々でビジネスを行うことが可能になり、利益をより多くうむことが期待できます。

こういった、海外諸国での税制優遇措置等について、以前のブログでも解説したことがありますので、是非ご参考にして頂ければと思います。

「日本・タイ・フィリピンの税制、経済特区を解説」の記事はこちら
「マレーシア・シンガポール・ベトナムの税制、経済特区を解説」の記事はこちら
「中国・韓国・台湾の税制、経済特区を解説」の記事はこちら

IT技術の発達

近年ではIT技術も発達し、インターネットを通じて国境を越えたコミュニケーションも容易にとれるようになりました。そのため、海外拠点との連携もとれやすくなり、中小企業にとっての海外進出のハードルが大きく下がってきています。

例えば、クラウド技術の出現により、以前と比べITコストを抑えた上で、海外拠点の経営情報を、リアルタイムに見える化することが可能になりました。これにより、本社側からも海外ビジネスに対し迅速な経営判断を下せるだけでなく、透明度も増しガバナンス強化にも繋がるといえます。

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海外進出先国として注目されるASEAN諸国

 経済産業省の調査によると、海外に展開している中小企業の海外子会社のうち約30%が中国にあるといいます。一方で、米中貿易摩擦に代表される政治面や、人件費高騰といった経済面等の観点からチャイナリスクが浮上したことで、リスクを分散させるためにも、チャイナプラスワンとして中国以外の第3国にも拠点を設ける経営戦略が注目されるようになる中で、東南アジア諸国が進出先国として注目されるようになりました。

 東南アジア諸国は先述した内容に加え、経済成長が著しく人口も増加傾向にあること、ITインフラも整備されつつあること、日本人との親和性も高いこと、経済特区制度のような税制優遇も受けやすいことなどからも、人気傾向にあります。

事業拡大の検討国において、タイやベトナムが上位

 JETROの「2020年度 海外事業展開に関するアンケート調査」によると、ASEAN主要6か国(タイ・ベトナム・インドネシア・シンガポール・マレーシア・フィリピン)に事業拡大を図る企業数は全体の65.4%と半数を超えています。また、今後、事業拡大を図る国に関しては、タイ(全体の36.7%)やベトナム(全体の40.9%)が上位に入っており、いずれも前年度より増加傾向となっています。経済産業省の調査においても、中小企業の海外子会社の進出先に関して、タイは中国に次いで2位に、ベトナムは5位に入っています。(3位は米国、4位は香港)

タイが注目される背景

 タイは、日本企業が進出した事例も豊富であること、親日国として有名で人々との親和性やマーケットとしてのポテンシャルが高いこと、アジア周辺国とのアクセスも比較的よいこと、ICT環境も整いつつあることなど様々な理由から進出先として注目を集めてきたといえます。タイ投資委員会が2021年2月10日に発表したリリースでは、2020年のタイ国外からタイ国内への直接投資に関して、日本が最大の投資国であることが公表されました。このことからも日本企業のタイへの進出意欲が高いことが伺えます。

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ベトナムが注目される背景

 特に、ベトナムは近年、中国に代わる進出先としても注目を集めています。ベトナムは人件費が比較的安価なだけでなく、儒教の影響と考えられる人々の勤勉さや、伝統的な主力産業が繊維産業であることからもくる手先の器用さを持ち合わせた質の高い人材が多いのです。また、天然資源の豊富さや、周辺のASEAN諸国や中国等の周辺諸国へのアクセスの良さも魅力だと考えられます。

(出典)

経済産業省「2020年版中小企業白書・小規模企業白書概要」

ジェトロ「2020年度海外事業展開に関するアンケート調査」

The Thailand Board of Investment 「Thailand 2020 Investment Applications at Over 480 Billion Baht, Led by E&E and Food, BOI Says. (2021-2-10)」

中小企業の海外進出成功事例

次に、弊社マルチブックが支援させていただいた、中小企業の海外進出成功事例を紹介します。

タイ進出されている飲食業

日本国内でもうどん・焼肉等と様々な業態を展開している中小企業です。進出検討時にはベトナム・ラオスやミャンマー等の視察を行った末に、日系飲食店の成功事例が多かったことからタイのバンコクを進出先として決定しております。3年間で店舗数も8店舗まで伸ばしております。

進出当初は現地の会計事務所に経理業務を外注していたものの、経理業務の内製化と共に日本とリアルタイムに経営情報を共有できることを目指し、クラウド会計・ERPサービス「multibook」を選定いたしました。。その結果、店舗別の月次損益が早いタイミングでわかるようになり、スピード感をもった投資判断をすることが容易に出来るようになっております。

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ベトナム進出されている金属加工業

金属表面加工において高い技術力を誇る中小企業で、ベトナム進出している取引先からの引き合いが強く進出を決定しております。工場設立時には10数名しかいなかった社員も、現在では100名に迫るまでに事業規模を拡大されております。

技術に強みを持たれる会社であるが、日本法人の専務を兼務されている現地法人の代表取締役は人材を大切にする社風を現法にも取り入れることで、高い従業員の定着率をキープされております。細やかな技術指導だけでなく、各種レクリエーション活動の中での現地従業員とのコミュニケーションも大切にされております。

中小企業が海外進出する時の成功の鍵

大企業と比較し、海外での経営ノウハウが蓄積されていない中小企業が海外展開を成功させるための重要な鍵としては、以下の点が挙げられます。

グローバル人材の育成・確保

 海外で実際にビジネスを推進するとなると、言語や価値観の違いに上手く対応しながら現地の従業員やステークホルダーとコミュニケーションをとらなければなりません。また、日本的な価値観に偏ったマネジメントに固執してしまうと現地の従業員等の反感を買い、定着率を下げてしまう可能性があります。そのため、現地での会話に支障のない程の語学力がある人材や異なる文化や価値観に対して理解力のある人材の育成・確保に力を入れるべきでしょう。

現地の法制度・商習慣の理解

 海外では日本と異なる、その国独自の法律や商習慣が定められています。それのルールを事前に調査し、理解を深めたうえで安全にビジネスを行っていく必要があります。

例えば、現地の宗教や文化を理解していないがために現地の従業員とのコミュニケーションの中で不和や誤解が生じたり、言語はもちろん現地の税務・労務の制度を理解していないが為に法的な罰則が発生する可能性もございます。

現地市場の情報確保

 海外で製品やサービスを広めていくためには、現地の市場動向やニーズを理解したうえで戦略を練っていくことが求められます。国内で人気の製品やサービスも海外では通じないということもあります。そのため、その国の環境や人々に適応した製品・サービス展開をしていく必要があるでしょう。限られたネットワークの中でも、現地の信頼できるパートナーを見つけるなどしながら、必要な情報の収集に努めましょう。

内部統制の強化

 海外拠点を持った際、本社が海外拠点での経営状況や現場の運用状況を正確に把握・管理できていないという状況も珍しくありません。海外拠点で不正が生じた際には、その責任の所在は本社にも問われることになります。不正や不祥事が発生して取返しがつかないということにならないよう、海外拠点の経営状況やオペレーションの見える化により内部統制の強化に努めることは必須となります。

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撤退戦略の立案

 海外進出をする際に、事前に撤退時の戦略を策定しておく必要があるというのは定説ではあるものの、実際には具体的に考えることは難しいのではと思います。一方で、どういった基準で撤退の判断をするのかを事前に知っておくことは、自社の海外ビジネスが一般的に成功しているのかどうかを知るうえでも大切な要素となります。

例えば、一例として貢献利益や営業利益を用いる手法がございます。下図のように、両方の利益を常にモニタリングしておくことで、単純に貢献利益からの判断ではなく、全体経費の配賦率からも事業撤退するか等の判断が可能となります。

このように、海外で想定外の環境変化やトラブルが起きたときに冷静な判断と実行を行っていくためにも、リアルタイムでこういった数値の把握を可能と出来る基盤を準備しつつ、リスクマネジメントを行ったうえで事業展開を図りましょう。


最後まで読んでくださりありがとうございました。

今回は、中小企業の海外進出の現状や海外進出における成功の鍵をまとめました。企業の海外進出には様々なリスクも潜んでいます。事前の徹底した準備や強固なオペレーション体制の構築を行うことで、海外展開成功の可能性を少しでも上げられるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

渡部 学

日系半導体商社にて経理、IT、シェアードサービス、海外業務統括、総務の責任者を経て、香港現地のM&Aに伴う買収先のPMIに従事。その後アジアパシフィック全域の財務統括を担う。帰国後は外資系医療機器製造業の日本法人におけるCFOとしてグローバル企業のリーダー職に従事。2019年株式会社マルチブックにCFOとして参画しM&Aによる資金調達をリード。2021年CEO就任。

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