中国・韓国・台湾の税制、経済特区を解説

税務

記事更新日:2021/06/25

中国・韓国・台湾の税制、経済特区を解説

こんにちは。マルチブック編集部です。

 海外進出時に気になることとして、「税金がどれくらいかかるのか」ということがあると思います。今回は中国・韓国・台湾の税制度について解説していきます。

 前回前々回では日本企業が多く進出している東南アジアの税制度を取り上げましたが、東アジアは日本と文化や社会が似ているため、進出のハードルは低いでしょう。従来はコストダウンを目当てに企業は東アジアに進出をしていましたが、現在は市場の拡大や親会社・取引先との関係性から進出する中小企業が増えています。しかし、その際気になるのはやはりコスト面。中でも「税金」がどのくらいかかるのかということについて解説します。

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韓国における法人所得税、付加価値税は?

韓国の法人税は累進課税制度をとっているため、売り上げが高ければ税率は25%と高くなりますが、低ければ20%以下に抑えることができます。よって、売上規模が比較的小さな中小企業にも有利な国だといえるでしょう。

・所得金額に応じて法人税と地方所得税がかかる
  2億ウォン(約2000万)以下の場合は10%+1%
      2億~200億ウォン(約20億円) は20%+2%
  200億ウォン~3000億ウォン(300億円)は22%+2.2%
      それ以降は25%+2.5%
・個人所得税は6~45%の累進課税
  これに加えて10%の地方所得税
・付加価値税(日本の消費税)は10% 輸出品はゼロ
出典元:韓国-税制-その他の税制  日本貿易振興機構

韓国における経済特区「仁川経済自由区域」とは

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2003年から建設が開始し、2020年に完成予定の仁川経済自由区域があります。そこでは北東アジア経済中心実現戦略の中核となる地域として政府レベルでの取り組みが進んでおり、主に金融や先端産業、物流、バイオヘルスケアの分野に注力しています。

主な優遇政策として、法人税に関して始めの3~5年間は100%免除、次の2年間は50%減税されます。また、地方税は最大15年間免除されます。他にも規制緩和、便利な生活環境と簡単行政サービスの提供などの環境が整っています。
出典元:公式HP ifez 投資メリット

韓国進出ひとことメモ:「企業の会計誠実度」とは


韓国では2018年から「企業の会計誠実度」を評価することを定めています。そして、企業の監査意見が「適正」でないか、もしくは監査態度が「不誠実」な企業は国税庁の税務調査を受けることとなります。
出典元:KPMG SAMJONG-“Weekly News Letter 2018”

中国における法人所得税、付加価値税は?

中国の法人税は日本の29.7%に比べ、5~10%ほど低く、さらに世界有数の優遇制度を設けています。企業の規模や拠点を設立する地区、携わる分野によっても税率が変わってくるため、事前によく調べて把握しておきましょう。

法人税は25% 、中小企業は20%
  国の条件に合致するハイテク企業は15%
・個人所得税 183日以上滞在した居住者には3~45%の累進課税
・増殖税(消費税)モノに対しては16% サービスに対しては6%
出典元:税制 | 中国 – アジア – 国・地域別に見る  日本貿易振興機構

中国における優遇制度


 中小企業の所得税に対して減税されます。課税所得100万元までは5%の税率、100~300万元までは10%(2021年まで)の税率で課税されます。
 地域別にみると、中西部地域では関税の免除や外資設立条件の緩和、条件に当てはまれば税率が15%になるなどの優遇があります。また、上海市では親会社の資産総額が2億米ドルを上回り、かつ、現地が一定の機能を担う外資企業は人材誘致の優遇や資金援助を受けられます。

 中国には数百の経済技術開発とや7つの経済特区があります。その中で最も目立つ優遇制度のひとつに法人税の減税があります。国が重点的に支援するハイテク企業に関しては、1,2年目は税金免除、3年目は半減・輸入設備の免税され、さらに特定の地区で設立された新企業は5年間25%の法人税を免除されます(2020年まで有効)。   
出典元:JETRO 中国- 税制優遇政策

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台湾における法人所得税、付加価値税は?

米中摩擦や日韓関係悪化など、台湾を取り巻くダイナミックな変動を背景に、台湾国内では税制度が年々改正されています。例えば、営利事業所得税(法人税)は年々引き下げられてます。以前は25%と周辺諸国に比べ高かったのですが、段階的に2018年17%にまで下がり、その後20%まで上がりました。また、未配当利益に対して2017年は10%だったものの、2019年には廃止されました。

さらに、企業が少しでも税金を安くしようとする努力を防ぐために様々な制度が作られています。

その制度の一つに、移転価格税制があります。これは国内の事業者(台湾国内の子会社など)が国内外の企業(日本の親会社)に従属し、その相互間に損益を取引して税額を減少させた場合「通常の処理に適合しない」と判断されれば税額を調整されるというものです。つまり、子会社の利益は親会社と別に算出しなければならないのです。

また、最低税負担も制定されました。これは一定の非課税所得や免税所得を加えた「基本所得」に課税し、最低限の納税額を計算する制度です。それ以前は国外収入など非課税所得を多く得ることができていましたが、上記の制度を導入したことで、海外で多額の所得を得ている個人や多額の租税優遇を受ける企業に対する課税の不平等を是正することができるようになりました。
出典元:Global Tax Platform

営利事業所得税(法人税)は20% 
  *12万台湾元(440万円)以下の中小企業は免税
・移転価格税制と最低税負担
・個人や外国人株主への配当には源泉税が10%
・消費税は5%
・個人所得税は183日以上の滞在者は5~45%の累進課税、非居住者は一律18%(100万元以上の国外所得を参入して税額を計算し、通常の税率で計算し、高いほうを納税することとなった)
出典元:税制 | 台湾 – アジア – 国・地域別に見る  日本貿易振興機構

台湾における経済特区

台湾ははじめて「Tax Free Zone」を高雄市に設立し、中国がこれに続いたことから経済特区の発祥の地とされます。現在はFTZ(Free Trade Zone:自由貿易地域)を国内に多く設け、対外輸出目的の企業には関税や事業税、その他の税を課さないなどの優遇政策を実施しています。
出典元:Taiwan Government Website Open Information 

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台湾における優遇制度

台湾には多くの税制優遇制度がありますが、その中でも以下のものが近年制定/改正されたものです。

追加① AI機器、5G投資分野は税額控除される。
追加② 2019年、未処分利益追加課税を0%にする。
改正① 技術所有者などへの課税優遇。
改正② ベンチャー事業は法人税を課税されずに、個人総合所得のみを課税する。
改正③ 株式報酬の課税対象を従業員にまで拡大する。

※注意 台湾進出する際の注意点の1つに、外国の投資会社は、年売り上げが300万台湾ドル(1000万円)以上または3年間のトータル売り上げが1000万元(3650万円)ないと会社の存続が出来ないです。そのため、進出の際は、台湾市場を理解して戦略を練り、余裕のある資金を準備しなければなりません。
出典元:Digima~出島~

台湾進出ひとことメモ

台湾は誤った申告や申告漏れを防ぐための規定があります。具体的には、原始証憑を恣意的に費用を過大計上できないよう、費用別に詳細が定められています。また、売り上げを出す際、国が発行する「統一発票」が配られ、中国語と繁体字の両方を使用し、用途別に別れた書式に基づいて記載します。

台湾の税務・会計は日本と違う所があり、さらに外国審査投資委員会、市政局、労働部、移民局、国税など各省庁に書類を審査されるため、提出する書類にしっかりと記載できるよう準備することが大切です。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます!今回は東アジアの税制を取り上げました。日本とは大きく違うお隣の国の税制度への理解が深まっていれば幸いです。

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この記事を書いた人

福井 和男

株式会社マルチブック 取締役 CRO
福井 和男

関西学院大学商学部を卒業後、1993年、株式会社ビジネスブレイン太田昭和に入社。10年間、会計システム開発プロジェクトに参画した後、IBMビジネスコンサルティングサービス、IBMに出向し、10年間、SAP導入プロジェクトに参画。2012年、マルチブック(旧社名:ティーディー・アンド・カンパニー)に入社し、SAP導入プロジェクト参画、フィリピン拠点CFOを経て、「multibook」事業担当となる。

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