日本・タイ・フィリピンの税制、経済特区を解説

税務

記事更新日:2021/06/10

日本・タイ・フィリピンの税制、経済特区を解説

こんにちは。マルチブック編集部です。

 海外進出時に気になることとして、「税金がどれくらいかかるのか」ということがあると思います。今回は前提知識として日本を含め、タイ・フィリピンの税制度についてご紹介していきます。

 昨今のコロナの影響で、海外進出を躊躇する企業が多くなってしまっているのでは無いでしょうか。一方で、各国では海外企業に対して優遇制度等も整っており、進出することで享受出来るメリットもございます。近年、大企業に限らず中小企業も海外展開をする傾向があり、「これから現地法人の設立や増設を考えている企業の背中を押したい!」という思いでこの記事を書いております。

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日本における法人税、実効税率は?

日本では段階的に法人税が引き下げられており、30年前は40%、8年前までは30%でしたが、ついに2020年には23%まで引き下げられました。しかし実効税率も含めると29.7%となり、先進国の中では高い水準です。

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・法人税 23.2%

(中小企業は800万円以下の所得は19%→2021年3月までは15%)

・地方税や法人住民税などを含めた実効税率 29.7%

・所得税 5~45%の累進課税

出典元:財務省

タイにおける法人所得税、付加価値税は?

タイの税率は日本の29.7%よりも10%ほど法人実効税率が安くなっています。さらに、EEC(東部経済回廊)という経済特区やBOIと呼ばれる優遇制度などがあり、日本よりも税金費用はかからないでしょう。

・法人所得税は20%

 (課税所得が300万バーツ(約1050万円)以下の中小企業は15%)

・付加価値税(日本の消費税に値する)は7%

・個人所得税は180日以上の滞在者に対して5~35%の累進課税

 (現在10%の減税が検討されている)

出典元:税制 | タイ – アジア – 国・地域別に見る

EEC(東部経済回廊)とは、タイのあたらしい経済特区

 EEC(東部経済回廊)とは、タイ政府が2017年から力を入れたあたらしい経済特区です。組み立てや製造業に対して最大10年間、先端テクノロジーには最大13年間税額を免除するなど優遇措置があります! 

出典元:Thailand Website: EEC

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BOI(タイ国投資委員会)とは、タイ投資振興のために作られた優遇制度

BOI(タイ国投資委員会)とは、海外からのタイ投資振興のために作られた制度です。「税の免除・減税」や「外国人のビザ・労働許可の優遇」などがあり、ほとんどのタイに進出している外国企業が申請しています。法人所得は3〜8年間免税 / 減税されたり、原材料輸入の輸入税が免税されたりします。EECの恩恵を受けていてもBOIは併用可能です。

出典元:THAILAND BOARD OF INVESTMENT

【ひとことメモ】タイにおける会計事情

外国であっても税を把握し、税務調査に厳密対応できなければなりません。タイにおいて税務調査に対応する困難はたくさんあります!

タイでは経理人材が不足しており、加えて言語の壁から日本人幹部との経理処理に関する意思疎通が十分でないことが多いです。さらに経理部門、製造部門、資材部門、販売部門などのタイ人同士のヨコのコミュニケーションも不十分な傾向があります。また、日本人幹部も技術畑、営業畑の人が多く、経理に詳しくない人が多いです。

出典元:タイの投資環境-第12章 税制_国際協力銀行

だからこそ、普段から各部門の連携と適切にデータをそろえ、タイ語で対応できることが税務調査において重要です。現地人の育成とともに、海外拠点管理に強いクラウド型会計・ERPサービスの「multibook」を導入すれば、データの一元化や言語対応がスムーズに進みます。

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フィリピンにおける法人所得税、付加価値税は?

フィリピンは法人税がなんと日本の29.7%よりも高く30%です。さらに税収を安定的に確保したいという国の方針から、赤字の場合も「最低法人税」を支払わないとなりません。加えて、未処分利益を正当な理由なく分配してない場合は不当留保とみなされ、課税されるなど厳しい税制度です。しかし、300区以上の経済特区ではかなりの優遇が受けられるという魅力があります。

また、注意するべきこととして、フィリピンにある子会社から親会社がサービス・ロイヤリティ・利息にフィリピンにおいて約10~15%課税されることです。ただし居住者証明を提出することで租税条約が適用されるようになりました。

出典元:フィリピンの投資環境(税制)_国際協力銀行

・法人所得税は原則30%

 (2029年まで20%に引き下げる案が審議されている)

※最低法人所得があり、赤字でも売り上げ総利益の2%を納めなければならない

・不当内部留保:正当な理由のないまま未処分利益の配分を行わない場合はその10%を課税される

・付加価値税(日本の消費税に値する)は商品の純利益の12%

・個人所得税は180日以上の滞在者に対して0~35%の累進課税

 非居住者はフィリピンで得た所得の一律25%を納税しなければならない

出典元:フィリピン会計・税務ハンドブック2020年版_pwc

フィリピンにおける経済特区

フィリピンには約380区の経済特区があり、1502社(2017年外務省データ)の日系企業のうちほとんどが経済特区に進出しています。フィリピンの経済特区の特徴として、製造業やITなどへの「業種専門」の経済特区があります。

・4年~8年間の法人所得税が免税(国税、地方税に代わる特別税5%が適用)

・機械設備、スペアパーツ、原材料の輸入関税 及びVATの免税

・外国人労働者を雇用することが可能

・外国人投資家および家族に永住権保証

・100%外国資本企業が認可

出典元:経済特区 (PEZA)_N.T.フィリピンズ株式会社

 最後まで読んでいただき、ありがとうございます!今回はタイとフィリピンの税制と優遇制度を取り上げました。今後も各国進出の際に気になる税制度のことをご紹介します。

 マルチブックは各国に会計事務所のパートナーもおりますので、お困りの際にはご紹介も可能です。是非お気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

福井 和男

株式会社マルチブック 取締役 CRO
福井 和男

関西学院大学商学部を卒業後、1993年、株式会社ビジネスブレイン太田昭和に入社。10年間、会計システム開発プロジェクトに参画した後、IBMビジネスコンサルティングサービス、IBMに出向し、10年間、SAP導入プロジェクトに参画。2012年、マルチブック(旧社名:ティーディー・アンド・カンパニー)に入社し、SAP導入プロジェクト参画、フィリピン拠点CFOを経て、「multibook」事業担当となる。

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