世界各国の給与計算基礎知識〜シンガポール編〜

海外人事・給与計算アウトソーシング

記事更新日:2024/03/06

世界各国の給与計算基礎知識〜シンガポール編〜

1.シンガポールの給与計算について

シンガポールの給与計算について解説する際、まず知っておくべき機関がシンガポールの国税庁、すなわちInland Revenue Authority of Singapore (IRAS)です。IRASは、税金の徴収や管理を担当しており、給与に関連する税金の計算方法や必要な手続きについての詳細情報を提供しています。
この記事では、シンガポールにおける給与計算の仕組みや制度について詳しく見ていきましょう。

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2.給与計算の基本

シンガポールにおける給与計算は、基本給、各種手当、ボーナス、控除など複数の要素を考慮して行われます。シンガポールの給与計算に関する重要な規定の概要をいくつか紹介します。

  • 支払いのサイクル:
    シンガポールでは、給与は通常月次で支払われます。給与は、給与期間の終了後7日以内に支払う必要があります​​。
  • 残業支払い:
    原則労働者が1日8時間または1週間44時間を超えて働いた場合、残業手当を支払う必要があります。残業手当は、基本時給の1.5倍以上でなければなりません。残業は月72時間を超えてはなりませんが、休日や公休日中の通常の労働時間内の作業はこの限りではありません​​。
  • 公休日労働:
    公休日に労働した場合、基本給の1日分の追加支払い、または代わりの休日が必要です。公休日に通常の労働時間を超えて働いた場合、少なくとも基本給の1.5倍の残業手当が必要です​​。
  • 休憩日労働:
    休憩日に労働した場合の支払いは、労働した時間と労働が発生した条件(雇用主の要求によるものか労働者の要求によるものか)によって異なります。雇用主の要求により半日以上労働した場合、2日分の給与が支払われます​​。
  • 年次有給休暇:
    労働者は、雇用初年度に7日の有給休暇を有し、その後、勤続年数に応じて1年ごとに1日ずつ増え、最大14日になります​​。
  • 有給病気休暇:
    労働者は、最大で1年間に14日の外来療養のための有給病気休暇と、最大60日の入院を伴う病気休暇を取得することができます。これらの休暇日数は、雇用期間に応じて比例して付与されます。
  • 最低賃金:
    シンガポールには一般的な最低賃金制度はありませんが、進歩的賃金モデル(PWM)により、特定のセクターの労働者には最低賃金が設定されています​​。

これらの規定は、雇用主と従業員が遵守すべき基本的なガイドラインを提供しますが、特定の職業や業界には追加の規則が適用される場合があります。

3.所得税の計算

シンガポールにおける個人所得税は累進課税制度を採用しており、所得が高くなるにつれて税率が上昇します。IRASでは、現在の税率や計算方法についての情報を提供しており、従業員や雇用主はこれらの情報を基に税金を計算し、申告する必要があります。税金の計算には、基本給だけでなく、手当やボーナスなどの収入も含まれます。

4.中央積立基金(CPF)への貢献

シンガポールの中央積立基金(CPF)は、同国の社会保障システムにおいて重要な役割を果たす包括的な社会保障貯蓄計画です。CPFは、シンガポール市民と永住権者が退職、医療、住宅のニーズに備えて資金を蓄えるのを助けます。CPFへの拠出は雇用主と従業員の両方によって行われ、拠出率は従業員の年齢と総賃金に応じて変動します。この制度により、従業員は退職時に財産を形成することができます。

5.給与計算における注意点

シンガポールで給与計算を行う際は、最新の税率やCPF貢献率に注意する必要があります。これらの率は変更される可能性があるため、IRASのウェブサイトを定期的に確認し、最新の情報を把握しておくことが重要です。また、給与計算に誤りがあると、従業員や企業に不利益をもたらす可能性があるため、慎重に行う必要があります。

6.給与計算システムの利用

シンガポールでは、給与計算プロセスを効率化するために多くの企業が給与計算システムを採用しています。これらのシステムは、給与の計算、CPFの貢献、所得税の控除などを自動化し、誤りを減らし、プロセスをスピードアップします。また、IRASはe-Taxガイドを提供しており、給与計算に関連する税務申告のプロセスを簡略化する方法について説明しています。株式会社マルチブックが提供する海外人事給与アウトソーシングサービスの海外クラウド人事部では、シンガポールにおける給与計算について、CPFへの拠出なども含めた最新のコンプライアンスに準拠した給与計算システムとBPOサービスを提供しています。

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7.まとめ

シンガポールにおける給与計算は、基本給、手当、ボーナス、CPF貢献、所得税控除など、複数の要素を考慮する必要があります。IRASは、これらのプロセスをサポートするための情報やツールを提供しており、雇用主や従業員はこれらのリソースを活用して、正確な給与計算と税務申告を行うことができます。また給与計算システムを活用することで給与計算プロセスを効率化し適切に管理することができます。誤った給与計算は従業員や企業に不利益をもたらす可能性があるため、システムやアウトソースを活用して慎重に行うことをオススメします。

※記事内容は2024年3月時点の情報です。

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この記事を書いた人

吉崎 萌

大手外資系メーカーの営業部門にて、国内最大級の小売店グループ会社の法人営業を担当。データに基づき購買者理解に合わせた戦略提案を行う。マルチブックのミッションに共感し2021年より広報として入社。2023年から日本で唯一のDeel代理店事業におけるプロジェクトリーダーに就任。営業、マーケティング、PR、事業開発等に従事。

この記事を書いた人

渡部 学

日系半導体商社にて経理、IT、シェアードサービス、海外業務統括、総務の責任者を経て、香港現地のM&Aに伴う買収先のPMIに従事。その後アジアパシフィック全域の財務統括を担う。帰国後は外資系医療機器製造業の日本法人におけるCFOとしてグローバル企業のリーダー職に従事。2019年株式会社マルチブックにCFOとして参画しM&Aによる資金調達をリード。2021年CEO就任。

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