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Excelによるリース資産管理の5つの限界とクラウド管理のメリット:IFRS16号対応の課題

IFRS16号

記事更新日:2024/10/22

Excelによるリース資産管理の5つの限界とクラウド管理のメリット:IFRS16号対応の課題

はじめに

IFRS16号の導入に伴い、多くの企業がリース資産管理にExcelを利用しています。JGAAPからIFRS適用へ切りかえる時点でExcelシートを使用することは、初期段階では手軽で効果的な方法でした。しかし、管理すべきリース資産の数が増加するにつれ、業務の複雑化、ヒューマンエラー、作業負担の増加といった問題が顕在化しています。特に担当者の変更時には、前任者が使用していたExcelファイルの引継ぎが大きな課題となっています。

本記事では、Excelによるリース資産管理の5つの主要な限界について詳しく解説し、クラウドリース管理システム導入によって得られる効率化のメリットを紹介します。Excelでのリース資産管理に限界を感じている方に、新たな解決策を提示します。

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Excelによるリース資産管理の5つの主要な限界

複雑な管理構造と非効率性

Excelでのリース資産管理では、以下のような問題が発生します:

  • 複数シートにまたがる情報管理の煩雑さ:
    リース契約データが複数のシートに散在し、情報の検索や更新が困難になります。
  • 全体像の把握困難:
    管理特性上、個別シート管理を行っているため、リース資産管理の全体的な傾向の把握が困難になります。
  • 大量データ処理時の性能低下とクラッシュリスク:
    リース契約数の増加に伴い、Excelファイルのサイズが肥大化し、処理速度の低下やクラッシュのリスクが高まります。

例えば、通常100件のリース資産を持っている企業は、1リース資産1シートで管理をしています。100シートに渡ってリース契約を管理し串刺してメンテナンス集計を行っています。vlookupやファイナンス上の計算式が組み込まれており動作も遅く日々の業務効率を著しく低下させています。

データ入力と計算のエラーリスク

IFRS16号対応には複雑な計算が必要ですが、Excelでの管理には以下のリスクがあります。

  • 手動入力によるミス:
    データ入力時のtypoや転記ミスが発生しやすくなります。
  • 複雑な関数やマクロによる計算エラー:
    高度なExcelスキルを持つ担当者が作成した複雑な関数やマクロは、他の担当者にとって理解や修正が困難です。
  • IFRS16号に必要な複雑な計算の手動処理の問題:
    使用権資産やリース負債の計算、利息費用の算定などの複雑な計算を手動で行うことで、ミスのリスクが高まります。

企業によっては、計算ミスにより、財務諸表に誤りが生じていたケースがあっても検証が困難になっています。

属人化と知識の偏在

Excelを使用したリース資産管理は、特定の担当者のスキルに依存しがちです。

  • 特定担当者への依存:
    複雑なExcelファイルの操作が特定の担当者にしかできない状況が生まれます。
  • 引継ぎの困難さ:
    担当者の変更時に、複雑なExcelファイルの仕組みを新しい担当者に引き継ぐのが非常に困難です。

例えば、主要な担当者の突然の退職により、シートの理解に膨大な時間を使い、その後決算直前までリース資産管理が適切に行えなくなることがあります。

グローバル管理の課題

多国籍企業や複数の子会社を持つ企業では、以下のような問題が発生します。

  • 拠点間のデータ形式の不一致:
    各拠点で異なるフォーマットや命名規則を使用することで、データの統合が困難になります。
  • 集計作業の煩雑さ:
    異なるExcelファイルからデータを集める作業に多大な時間がかかります。
  • 一貫性の欠如:
    拠点ごとに異なる計算方法や仮定を使用することで、全社的な財務報告の一貫性が損なわれる可能性があります。

ある多国籍企業では、10か国以上の拠点からのデータ統合と内容の確認に決算毎に数日を要していました。

リアルタイム分析と情報共有の制限

Excelによる管理では、以下のような制限があります。

  • データ更新の遅延:
    最新のデータを反映させるためには、手動での更新作業が必要です。
  • 拠点間でのリアルタイム情報共有の制限:
    各拠点が個別にファイルを管理するため、リアルタイムでの情報共有が困難です。
  • 監査証跡と変更履歴の管理困難:
    誰がいつどのようなデータ変更を行ったかの詳細な記録や、リース契約の条件変更履歴を正確に追跡することが複雑です。

これらの制限により、IFRS16号対応における監査要件の充足や、決算の早期化に支障をきたす可能性があります。

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クラウドリース管理システム導入のメリット

これらのExcel管理の限界を克服するため、クラウドリース管理システムの導入が効果的です。主なメリットは以下の通りです。

データの一元管理

  • リース契約データをクラウド上で一元管理
  • 情報の検索や更新が瞬時に可能
  • 業務全体の把握が容易に
  • フィルタやシート間の串刺し集計が不要に

自動化された会計処理

  • 複雑なリース資産の減価償却や利息計算の自動化
  • 少額・短期リース資産の自動判定
  • リース負債の返済額の自動算出
  • グループ会社全体の仕訳や注記情報の自動出力

リアルタイムの情報共有

  • データのリアルタイム更新
  • 国内子会社およびグローバル全拠点でのデータ共有
  • 常に最新のデータに基づく意思決定が可能
  • 多拠点展開企業のリース資産管理精度向上

堅牢な監査証跡と変更履歴管理

  • すべてのデータ変更を自動的に記録
  • リース契約の条件変更履歴を正確に追跡
  • 監査対応の効率化と透明性の向上

結論

Excelによるリース資産管理は、IFRS16号導入初期には有効な方法でしたが、リース資産の増加に伴い多くの限界が明らかになっています。特に担当者の変更時には、これらの問題がより顕著になります。IFRS16号への完全な対応と効率的な管理を実現するためには、クラウドベースのリース資産管理システムの導入を検討することが重要です。

クラウドリース管理システムの導入により、データの一元管理、自動化された会計処理、リアルタイムの情報共有が可能となり、業務の複雑化やヒューマンエラー、作業負担の増加といった問題を解決できます。さらに、担当者の変更時にも、スムーズな引継ぎと業務の継続性を確保できます。

リース資産管理の効率化と正確性向上を目指す企業にとって、クラウドリース管理システムは非常に有効な選択肢となるでしょう。導入を検討する際は、自社のニーズや規模に合わせて適切なシステムを選択し、段階的な移行計画を立てることをおすすめします。

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この記事を書いた人

田村 創一

株式会社マルチブック
執行役員/CXO
IFRS16号/新リースソリューション推進部 部長

慶應義塾大学経済学部卒。在学中に公認会計士二次試験合格。卒業後、大手生命保険情報システム会社に入社し、SAP導入プロジェクトに従事。2002年、マルチブック(旧社名:ティーディー・アンド・カンパニー)に入社後も一貫してSAPシステムコンサルティング事業に携わりつつ、取締役CFO、取締役業務推進担当などを歴任。「multibook」事業立ち上げや設計にも関与する。2021年7月、SAPシステムコンサルティング事業のキャップジェミニ社への移転に伴い移籍。2023年4月マルチブックに舞い戻り、サービスデリバリ部門統括責任者に就任。25年以上の会計・ERP経験を有する。

この記事を書いた人

マルチブック編集部

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