海外拠点の会計システムの重要性と選び方

海外拠点管理

記事更新日:2024/06/05

海外拠点の会計システムの重要性と選び方

こんにちは、株式会社マルチブック代表の渡部学です。
日本企業の海外進出は益々増加傾向にありますが、日本国内の拠点ではしっかりと行われている会計情報の厳密な管理、リアルタイム性、徹底した内部統制が、海外拠点ではおろそかになっているのが実情ではないでしょうか。この記事では、海外拠点向け会計システムに求められる主な機能要件とその選び方について詳しく解説します。

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海外拠点を管理する会計システムの重要性

  • 多通貨での残高管理

海外拠点では、複数の通貨での取引が発生します。多通貨対応の会計システムがない場合、取引先とのやりとりは取引通貨で実施、管理、一方、税務申告、財務諸表作成はローカル通貨での対応が必要といったことを全てシステム外、手作業で行うことになります。また、連結決算においても、多くの手作業、システム外での管理が必要になります。

  • 現地の会計・税務要件

各国には、それぞれ独自の会計要件、税務要件が存在(例えば、タイでは、サービス取引に関して、入出金時にVATを認識します。ベトナムでは、勘定科目体系が定められており、期末に独特の振替仕訳を求められたりします。)し、当然ながら、要件に合致した会計のアウトプット、税務申告が求められます。もし各国要件に合致しない会計システムを利用することになると、多くの手作業、システム外での管理が必要となり、場合によっては、不備により、ペナルティが科せられる可能性があります。

  • 内部統制、不正

東南アジア各国では、不正の発生件数が、日本に比べると多くなっています。日本以上に、内部統制の強化を行い、不正を発生させない状況を作ることが重要です。具体的には、経営層、マネージャーが常に、仕訳詳細レベルまで、チェック可能、チェックしているという状況を作り出すことが求められます。

  • グループ経営管理、連結決算への対応

中規模以上の日本企業では、海外個社の決算ができれば良いというだけでなく、日本本社、他の拠点とあわせて、同一粒度、スピード感でのグループ経営管理が求められるでしょう。また連結決算への対応も必要で、連結決算早期化のためには、海外拠点であっても、レベルを落とすわけにはいきません。

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システム選定のポイント

  • ローカル要件対応

会計システムを選定する際には、当該システムが現地の会計、税務要件に対応しているか、現地商習慣に対応しているか、多通貨管理が可能かを確認することが不可欠です。これは上記重要性の章でも記載のとおり、最重要のテーマであり、また全く現地要件対応されていない会計システムを選択すると、ローカルスタッフが退職してしまうリスクも発生します。

  • 導入後のサポート体制

システムは導入して終わりではなく、導入後、実業務運用がしっかりとまわるまでが重要です。海外拠点では、現地言語あるいは最低限、英語でのサポートが提供されているかはもちろんのことながら、業務運用へのアドバイスまで受けることが可能か、人の入れ替わりが激しいため、追加のトレーニングを受講可能か、問合せに対しての即時の応答といったことが求められます。

  • 内部統制、不正の対応

各種取引伝票の処理、会計伝票の転記にあたって、承認ステップが可能であること、会計伝票に証憑の添付が可能であること、転記した仕訳は、修正不可であること、日本本社からリアルタイムでアクセスできること、各種モニタリング機能が用意されていることが、内部統制の強化、不正防止を実現するうえで、求められます。

  • グループ経営管理、連結決算への対応

取引先別はもちろんのこと、セグメントやプロジェクトといった切り口で、仕訳転記、レポート出力が可能なことが求められます。また経営管理、連結決算いずれも、ローカルの勘定科目体系から連結(グループ)勘定体系への自動変換機能が非常に重要になってきます。この機能がないと、Excelで手作業で変換という業務を毎月実施しなくてはいけません。

主要な会計システムの紹介

  • SAP Business One

SAP Business Oneは、中小企業向けに設計された統合型ビジネス管理ソリューションです。このシステムは、財務管理、販売、購買、在庫管理、生産管理など、ビジネスのあらゆる側面をカバーしています。特に、多通貨対応や現地の法規制対応に優れており、国際展開を行う企業にとって非常に有益です。SAP Business Oneは、ユーザーフレンドリーなインターフェースを持ち、簡単に操作できるため、従業員のトレーニング時間を短縮し、迅速な導入を実現します。さらに、リアルタイムのデータ分析機能を備えており、経営陣がタイムリーかつ正確な情報に基づいて意思決定を行うことができます。

  • Oracle NetSuite

Oracle NetSuiteは、クラウドベースの統合型ERPシステムであり、特に多国籍企業向けの機能が充実しています。このシステムは、財務管理、人事管理、CRM(顧客関係管理)、Eコマースなど、企業の主要な業務プロセスを一元管理します。クラウドベースのシステムであるため、インフラコストの削減やアップデートの自動化が可能です。また、Oracle NetSuiteは、多通貨対応や多言語対応が標準装備されており、世界中の拠点からのデータをリアルタイムで統合し、分析することができます。さらに、高度なカスタマイズ機能を備えており、企業の特定のニーズに応じたシステム構築が可能です。

  • Microsoft Dynamics 365

Microsoft Dynamics 365は、クラウドベースのビジネスアプリケーションスイートで、財務管理、販売、サービス、マーケティングなど、企業の主要な業務プロセスを統合します。このシステムの最大の特徴は、その柔軟なカスタマイズ性と拡張性です。企業の成長に応じて、必要な機能を追加したり、既存の機能を調整したりすることが容易です。Microsoft Dynamics 365は、Microsoft OfficeやAzureなど、他のMicrosoft製品とのシームレスな統合が可能であり、既存のITインフラとの連携がスムーズに行えます。また、AI(人工知能)やビッグデータ分析機能を活用することで、経営陣がデータに基づいた戦略的な意思決定を行うための強力なツールとなります。

  • multibook

「海外経営への挑戦をもっと身近に、もっと簡単に」をミッションに、ダイナミックに変化する海外ビジネスをテクノロジーで強力にサポートし、国境を越えてデータに基づいて人々を繋げることにコミットしています。12言語、複数帳簿に対応し、外貨建残高管理をはじめ本格的な会計機能、モノの動きと会計仕訳を連動させたロジスティクス機能、日割償却など国要件に対応した固定資産機能、IFRSでの連結決算に対応したリース資産管理機能、海外拠点で利用する立替経費精算機能、連結会計ソフトへの連携機能、グローバル全拠点の業績を把握するマネジメントコックピット機能、VAT申告書、源泉徴収税申告書、Invoice出力など、各国会計、税務、商習慣に対応した機能を実現しています。

 最速のグローバルクラウドERP(7つのお約束 ※)であることを掲げ、海外拠点の課題を解決しビジネスを加速することを実現します。

【※マルチブックの7つのお約束】

・迅速な意思決定支援

・経理の高速化

・顧客への迅速なレスポンス

・ERP/BPO導入期間の短縮

・新機能開発と市場投入の加速

・最新知識の迅速な取り入れと適応

・ストレスフリーな応答速度

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  • その他の選択肢

XeroやQuickBooksなども、小規模拠点向けの会計システムとして有力な選択肢です。Xeroは、クラウドベースのシステムで、シンプルで直感的なインターフェースを持ち、迅速に導入できる点が魅力です。QuickBooksも同様に、使いやすさと豊富な機能を兼ね備えた会計システムで、アメリカの各種サービスとの連携に強みがあります。これらのシステムは、言語が英語のみ、東南アジア各国の要件には完全対応していませんので、利用場面は限られますが、初期投資が少なく、スモールスタートが可能です。

導入事例

Oracle NetSuite導入事例

ある大手スポーツ用品メーカーは、NetSuite OneWorldを導入して海外新拠点の立ち上げを効率化しました。導入前は、短期間でのERP構築が求められ、現地のIT専門要員の確保が難しいという課題がありました。NetSuiteのクラウドERPを採用することで、システム運用とメンテナンスの負担を軽減し、わずか3ヶ月で新規拠点のシステムを導入。これにより、業務プロセスの効率化とコスト削減を実現し、リアルタイムでの業務パフォーマンスの監視と分析が可能になりました。

参照:日本オラクル株式会社.“導入事例 アシックス、海外新拠点立上げにNetSuite OneWorldを導入”.(参照2024-06-04)

Microsoft Dynamics 365導入事例

ある大手飲料メーカーは、Microsoft Dynamics 365を導入して業務効率を大幅に向上させました。導入前は、複数企業の合併に伴うインフラの冗長性やサプライチェーンの重複、透明性の欠如が課題でした。Dynamics 365の導入により、統合された業務プロセスの管理が実現し、ITコストが売上高の2.85%から1.4%未満に削減されました。また、リアルタイムのデータ分析と統一された顧客情報により、迅速な意思決定が可能となりました

参照:Microsoft Corporation.“Coca-Cola Beverages Africa streamlines its operations with Microsoft solutions”. (参照2024-06-05)

multibook導入事例

ある多国籍企業のIT部門では、急成長する海外拠点の財務管理に苦慮していました。多通貨取引や各国の税務要件に対応するための複雑な処理が必要で、システムの限界を感じていました。multibookを導入することで、これらの課題を解消し、各拠点のデータを一元管理できるようになりました。結果として、財務データの整合性が向上し、経営の透明性が高まりました。具体的な効果としては、月次レポート作成時間が50%短縮され、経理部門の生産性が30%向上しました。

グローバルERPで海外進出企業の経理・経営管理課題を解決!multibookの導入事例インタビュー記事はこちら>>

まとめと結論

海外拠点向け会計システムの選定と導入は、グローバルなビジネス展開において非常に重要です。適切なシステムを慎重に選ぶことは大切ですが、スピード感も重要です。新拠点の設立とともに、しっかりと選定したシステムが稼働状態にあり、拠点のオペレーション開始とともに、その経営状況が日本本社からリアルタイムで把握可能であることが求められます。この記事で紹介したポイントを参考に、海外拠点に最適な会計システムを選定し、成功への一歩を踏み出してください。

この記事を書いた人

渡部 学

日系半導体商社にて経理、IT、シェアードサービス、海外業務統括、総務の責任者を経て、香港現地のM&Aに伴う買収先のPMIに従事。その後アジアパシフィック全域の財務統括を担う。帰国後は外資系医療機器製造業の日本法人におけるCFOとしてグローバル企業のリーダー職に従事。2019年株式会社マルチブックにCFOとして参画しM&Aによる資金調達をリード。2021年CEO就任。

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