シェアードサービス導入の意義とは|BPOとの違いや課題、グローバル企業の事例も解説

経理アウトソーシング(BPO)

記事更新日:2023/04/09

シェアードサービス導入の意義とは|BPOとの違いや課題、グローバル企業の事例も解説

海外経理アウトソーシング「海外クラウド経理部」の田中です。

海外進出が進むと、各国で展開する事業の管理コストも増加します。そのため、各部門の機能を集約して効率化を図ることは重要な経営課題の1つです。グローバル企業のなかには、シェアードサービスを検討する企業もあります。

シェアードサービスを導入すると、人件費の削減や業務の効率化が可能です。この記事では、シェアードサービスの概要やメリット・デメリット、導入のポイントを解説します。

シェアードサービスとは

シェアードサービスとは、複数のグループ会社や事業部を構成する企業が、各部門で行われる業務の一部を1か所に集約させることです。現在は間接部門を中心に、シェアードサービスの導入が進んでいます。ここでは、間接部門の意味とシェアードサービスとBPOの違いを解説します。

間接部門とは

間接部門とは、次のような企業のコーポレート業務を担う部門です。

・人事や労務

・総務や庶務

・経理や財務

・情報システム管理

以上のコーポレート業務は、会社全体の事業活動を管理する業務ともいえます。グループ内の子会社が実施するコーポレート業務の共通点は多いため、業務内容を標準化しやすいと考えられます。そのためシェアードサービスを導入して業務を集約すると、グループ企業全体で業務の効率化が可能です。

BPOとの違い

BPOとは「Business Process Outsourcing(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」の略称で、業務を外部に委託するアウトソーシングの1種です。

BPOでは業務を外部委託する一方で、シェアードサービスでは社内やグループ内で集約業務を完結させる点で、両者には違いがあります。

シェアードサービスで対象となる業務の種類

シェアードサービスで対象となる業務は主に次のとおりです。

・経理財務

・総務業務

・人事業務

以上について、シェアードサービスの導入が進む具体的な業務内容を解説します。

経理財務

一般会計や支払い管理、入金管理はシェアードサービスを導入しやすい業務です。一方で管理会計や内部監査などの高い専門性が求められる業務は導入がしづらい業務で、実際に導入率も低い傾向にあります。

シェアードサービスを導入するにあたり、経理プロセスにソフトウェアロボットを取り入れたり、AIテクノロジーを組み込んだりして自動化による効率化も進んでいます。

総務業務

総務業務もシェアードサービスを導入しやすく、多くの企業が業務を集約させています。たとえば次のような業務においてシェアードサービスの導入が進んでいます。

・各種申請書受付

・代表電話対応

・会議室予約管理

・備品管理

以上のような定型業務は標準化しやすく、総務のなかでもとくにシェアードサービスの導入が進んでいます。

人事業務

人事業務では給与・賞与計算や社会保険と福利厚生に関連した業務が、シェアードサービスによって集約される傾向にあります。また採用から退職まで、一連の労務管理で発生する事務手続き全般にもシェアードサービスが導入されています。

シェアードサービスの組織形態と運用について

シェアードサービスの組織形態には、 子会社としてシェアサービスセンターを設立する方法と本社にシェアードサービス関連の部門を設立する方法が考えられます。それぞれの特徴や運用上のメリットについて解説します。

子会社としてシェアードサービスセンターを設立する

シェアードサービスを子会社として独立させると、別法人として扱えます。そのためシェアードサービスの売上やコストを明確にして、管理しやすい点がメリットです。また本社とは別会社にすると、給与面や待遇面で本社の従業員と差をつけられます。

一方でシステムやデータ統合に必要な初期コストが拡大しやすい点がデメリットです。また現場が混乱するリスクもあり、次に解説する部門設立よりも導入の難易度が高いといえます。

本社にシェアードサービス関連の部門を設立する

本社に部門を設立する大きなメリットは、サービス導入が容易である点です。子会社のシェアードサービスセンターを設立するよりも、スキル面やナレッジ面での共有を速やかに実施できるでしょう。

一方で従来のやり方に囚われやすく、抜本的な組織改革を実行できないリスクがあります。

シェアードサービスを導入する意義

シェアードサービスを導入すると人件費の削減や業務の効率化、業務品質の改善が可能です。本項では、シェアードサービスを導入する意義について解説します。

人件費の削減

シェアードサービスを導入すると、スケールメリットによる人件費の削減が期待できます。 スケールメリットとは事業の拡大により、生産性や効率性が向上することです。シェアードサービスを導入すると、各子会社に分散していた業務を集約させるため、関連する事業が拡大することになります。

また間接部門で行われていた業務の一部が集約されると、従業員を分散して配置する必要がなくなります。そのため限られた従業員数のなかで、人的リソースの有効活用が可能です。

業務の効率化

シェアードサービスを導入する際は、従来の業務フローを洗い出し標準化します。そのため導入の過程で、業務の効率化も可能です。業務フローを洗い出す過程で、不要な業務を廃止したり、効率の悪い業務は統合したりします。

業務品質の改善

間接部門の業務をシェアードサービスに集中させると、各部門で蓄積されたナレッジを共有できます。ナレッジを共有すると、学習や知識の最適化が進み、業務品質の改善が期待できるでしょう。

シェアードサービスにおける課題

シェアードサービスを導入すると、特定の専門業務が社外に集約されます。そのため、子会社でトラブルがあった際に、専門業務に関して連携が取りづらくなることが課題です。

さらにシェアードサービス導入に伴う労務環境の変化により、標準化された業務を担うことになったり、処遇面に納得できなかったりする従業員もでてきます。不満を抱える従業員が増加して、モチベーション低下につながるリスクがあります。

シェアードサービスを導入する際のポイント

シェアードサービスを導入する際のポイントは次の3点です。

・業務のプロセスを見直す

・シェアードサービス導入に伴うコストを見積もる

・グローバルERPの導入を検討するのも1つの手段

各項目について解説します。

業務のプロセスを見直す

現行のシステムを見直して、集約する業務を効率化することが大切です。まずは集約前のシステムを分析して、社内課題を明確にしましょう。洗い出した課題を解決できるようなシステムを選択すると、シェアードサービスの効果を引き出せます。またスタッフのモチベーション低下を招かないように、システムを構築することも大切です。

シェアードサービス導入に伴うコストを見積もる

シェアードサービス導入に伴うコストを見積もり、予算内に収めましょう。シェアードサービスで費用がかさむと、自社グループ企業の一部閉鎖や売却に迫られるケースもあります。そのため、予算内に収まるようにコスト計画を立てることが重要です。

またシェアードサービス化以外にも、アウトソーシングで業務効率化を図る手段もあります。シェアードサービスによる長期運用がアウトソーシングよりもコストを抑えられない場合は、導入そのものを見直したほうがよい場合もあるでしょう。

さらにシェアードサービスの導入を決定した場合もコスト面に配慮したうえで、子会社の設立と部門設置のいずれかの採用を決定することが大切です。

グローバルERPの導入を検討するのも1つの手段

グローバルERPを取り入れると、シェアードサービスの導入がスムーズです。ERPとはEnterprise Resources Planningの略称で、ヒトやモノ、カネ、情報などの経営資源を一元管理する考え方です。

グローバルERPには、従来のERPシステム以上の機能が含まれています。とくに複数の国で事業展開する企業が導入すると、現地での業務を効率化できます。

たとえば多言語・多通貨に対応したり、各国の法務や税務に関連した各種要件に適用したりするための機能が搭載されている点が特徴です。内部統制の強化や連結決算の早期化、海外拠点のDX化などを図り、グローバルシェアードサービスを実現できます。

シェアードサービスを実現した事例

LIXILやNECグループは、経理業務を集約してシェアードサービスを実現しました。それぞれのシェアードサービス導入の概要について解説します。

LIXILグループの事例

LIXILグループは世界150カ国以上で75,000人超の従業員を擁する多国籍企業です。毎日10億人以上の人びとに製品が利用されています。

当グループは、2017年5月の取組み開始依頼、約2年半で9ヵ国27拠点の経理業務を3つのシェアードサービスセンターに集約しました。

NECグループの事例

NECマネジメントパートナーはNECグループ11社の経理業務を受託するシェアードサービスセンターです。NECグループがシェアードサービスセンター設立した当初は、グループ内企業の経理業務の集約までは進みましたが、標準化には至らない状況でした。

経理業務のタスク管理ツールを導入して、各社の業務プロセスを横並びで比較できるようになって以降、標準化が進みました。

まとめ

シェアードサービスを導入して、各部門で行われる業務を1か所に集約させると、グループ企業全体の業務効率化につながります。またグローバルに展開するグループ企業がシェアードサービス化を進めるためには、グローバルERPの導入を検討するのも1つの手段です。

なかでもクラウド型のグローバルERPを導入すると、多言語・多通貨、各国法要件対応がよりスムーズになります。海外拠点に大きな負荷をかけずに、管理体制を日本本社に集約できる点が魅力です。クラウド型グローバルERPを導入する場合は、multibookの導入をご検討ください。

この記事を書いた人

田中 良樹

株式会社マルチブック
執行役員/BPO事業部 事業部長
大手複合機メーカーのソフトウェア営業部門を経て、グローバルERPを開発するベンチャー企業に入社。その後M&AによりSIerに入社し2022年まで在籍。
この間約20年一貫して自社開発グローバルERP事業に携わり、主に海外拠点をもつ日系企業をターゲットに営業、マーケティング、国内会計システムとの事業提携、海外SIパートナーの発掘、クラウドサービスの事業開発等に従事。2018年より営業責任者。
2022年より当社BPO事業責任者に就任。

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