内部統制とは?4つの目的と環境を整備し運用する方法を解説
会計
記事更新日:2021/07/13
こんにちは。マルチブック編集部です。
内部統制は非常に大切なキーワードです。市場の信頼を失墜させるような企業の不祥事が相次いで発覚して以来、J-SOX法が制定され、有効な内部統制システムやコーポレート・ガバナンス遵守状況の開示を通して、防止・抑止が図られてきました。
しかし、内部統制は近年注目されてきているにもかかわらず、その内容について的確に理解している人は意外に少ないのではと思います。
今回の記事では内部統制が注目されてきた背景と目的、実現方法について解説していきます。海外子会社のガバナンスに悩んでいる方、内部統制強化に取り組むためのヒントや基礎知識を得たい方は是非ご参考にしてください。
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目次
内部統制とは?
内部統制の概要
内部統制(Internal Control)とは、会社内の不正やミスを防ぎ、業務の効率化を目指すための、経営者から従業員まで全員が守るべきルールや仕組みを整備することです。それらのルールは普段の業務に組み込まれ、組織内のすべての人に意識して運用されるものです。
内部統制とコーポレートガバナンスとの違い
内部統制とコーポレートガバナンスはどちらも会社の仕組みですが、何が違うのでしょうか。内部統制は守りの視点から、特に財務諸表上で不正の防止を重視しているのに対して、コーポレートガバナンスはリスクテイクする際に対外的に説明できるような攻めの側面が強いです。また、内部統制は全社員に向けたルールを運用するなど「経営者による」統制、コーポレートガバナンスは株主への情報開示と透明性の確保など「経営者に対する」統制という側面が強いです。
なぜ内部統制が注目を浴びているのか?
巨大企業の不正
どのようにして内部統制は注目を浴びてきたのでしょうか。内部統制の必要性は、21世紀初頭、多くの大企業による不正が明らかになってきたことから高まりました。
例えば、2001年にアメリカの巨大企業の一つエンロンが巨額の粉飾決算によって破綻しました。全米でも随一の優良企業だと言われていたものの、相次ぐ海外の大規模事業の失敗により経営不振に陥ると、損失を子会社に押し付け、売り上げを水増していました。そして、不正が明るみに出ると株価は急落し、総額日本円で3兆円ほどの負債を抱えて倒産しました。
同時期に、通信事業で全米第2位と言われていた大手米企業も、劣化していた財務状況を隠ぺいすべく、偽の勘定科目を計上していたところがあります。そして、不正会計が発覚すると米国史上最大の負債額を抱えて倒産しました。
出典:内部統制の転職・求人ガイド 「日本版SOX法の制定に影響を与えた国内外の不正会計事件」<最終アクセス日 2021.3.10>
SOX法(企業改革法)成立に向けた内部統制の法制化
これらの事件はアメリカ株式市場への信頼を低下させました。これを受けて、米政府は財務諸表への信頼を取り戻すためにSOX法(企業改革法)の成立に向けて急遽動き出しました。SOX法は投資家を守るために存在し、監査の独立性強化、情報開示の強化、説明責任など様々な規定があります。
この法で最も影響が大きいとされる項目が内部統制です。CEOとCFOは、財務諸表に係る内部統制システムの構築・運用と、その有効性の検証を義務づけられています。そして、外部監査人がその監査・監査意見表明を行うこととなっています。
このSOX法の日本(Japan)版であるJ-SOX(内部統制報告制度)が2008年より施行されました。この制度は上場企業に対して、毎年、監査を受けた内部統制報告書を、有価証券報告書と合わせて提出することを義務化したものです。
内部統制の4つの目的
内部統制はどのような目的のために行うのでしょうか。金融庁によると以下の4つの目的が存在します。
業務の有効性及び効率性
経営の悪化を防ぎ、安定化を図るためには、余分なコストをカットする、無駄な業務をなくすなど、業務の有効性及び効率性を高めることが不可欠です。
財務報告の信頼性
内部統制において最重要視されているのはこの目的でしょう。財務諸表に粉飾決算などの虚偽の情報がないことを証明し、投資家や銀行の信頼を確保することは、投資を得る上で必要です。
事業活動に関わる法令等の遵守
基礎中の基礎ですが、法律を守り、企業活動を健全に行うことも目的の一つです。
資産の保全
事業を行ううえで不可欠な資産の取得や使用が、正当な手続の下に行われるようにすることも内部統制の目的です。
内部統制環境を整備し、運用する方法
具体的にどのように内部統制を実現するのか?それは個々の企業の組織環境や事業の特徴によって様々であり、全ての企業に効果的な画一的な方法があるわけではありません。しかし、金融庁は企業が内部統制をするために気を付けるべき要素を6つ挙げています。これから紹介する6つの要素は、各企業組織が工夫して自らに合った内部統制を実現するための礎となるでしょう。
統制環境
統制環境とは、組織の誠実性や経営の方針、取締役会と監査役の機能、慣行などを指し、「組織の気風」を形作り、他の要素にも影響を与える内部統制の基盤と成ります。
リスク評価と対応
リスクマネジメントは非常に重要です。組織目標を阻害するリスクを認識し、分析し、評価します。そして、リスクへの適切な対応も行います。
統制活動
統制活動とは、経営者の命令が適正に実行されるための方針や手続きのことです。例えば、権限及び職責の付与、職務の分掌などが含まれます。
情報と伝達
内部伝達に関しては、経営方針などを組織内の全ての者に伝達、重要な情報が特に上層部に迅速に伝達される手段を確保しなければなりません。外部伝達に関しては、情報開示するとともに、顧客などの組織の外部から重要な情報が伝えられることもあるため、それらを把握することも重要です。
財務報告の信頼性のための情報管理
財務報告の中核をなす会計情報については特段、管理・伝達体制を適正に構築しなければなりません。金融庁によれば、「経済活動を適切に、認識、測定し、会計処理するための一連の会計システムを構築する」必要があるそうです。クラウド型会計・ERPサービスの「multibook」では、ユーザー毎の権限設定や、転記済伝票は修正不可、伝票・財務諸表承認機能など、内部統制機能が充実しています。
モニタリング
内部統制が有効に機能していることを継続的にモニタリングするプロセスが必要です。経営管理などの日常的な業務に組み込まれた評価と、定期的な業務から独立した評価の二種類があります。
日常的モニタリング:各業務において帳簿記録と実際の製造・在庫、販売数量等との照合を行うことや、定期的に実施される棚卸手続において在庫の残高の正確性を監視すること。
独立的評価:内部監査部門などが、財務報告の信頼性を検証するために会計監査を行うなど。
しかし、海外拠点の財務諸表に日常的モニタリングを実施することは難しいでしょう。そこで、クラウド型会計・ERPサービスの「multibook」を使用すれば、世界中どこからでも、リアルタイムで、日本語での参照が可能です!(下はmultibookの実際のデモ画面)
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ITへの対応
ITへの対応は必ずしも独立に存在する要素ではなく、上記の要素の実施や組織目標達成のためにITを活用することを指します。 評価は内部統制の他の基本的要素と密接なため、一体となって評価され、その利便性だけでなく、脆弱性も考慮されます。
財務報告の信頼性のためのIT
財務報告の信頼性を確保するうえでIT抜きで考えることはできません。例えば、各業務で使われるコンピュータのデータが適切に収集、処理され、財務報告に反映されるようにすることが内部統制において重要になります。
さいごに
最後までお読みいただき、ありがとうございます。内部統制の目的と方法について、理解を深めて頂けましたでしょうか。
海外拠点向けクラウド会計・ERPサービスのmultibookは承認機能や権限設定で不正を未然に防止し、信頼出来る情報を集めるだけではなく、リアルタイムでのグローバル拠点のモニタリング実現し、各企業の内部統制強化をサポート可能なサービスとなっております。是非お気軽にお問い合わせください。
<出典>
金融庁 令和元年「『財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)』の公表について